何かを教える時、何かを相談された時、こういう言葉を言った事ってありませんか?
「俺でもできたんだからお前にもできる」
って。これねあんまり使わないほうがいいですよ。
まだできない人からしてみると、すでにある程度のレベルに達している人にこう言われると「はぁ?お前は特別だろ」って思いますから。
「俺でもできた」って謙遜のつもりで使ってるかもしれないけど、何かをできるようになった人と言うのはまだできない人から見たらすごい人なんです。
そんな人からそう言われると優越感からの上から目線に聞こえる事があります。
いや、気持ちは分からなくもないんですよ。
私もある程度できるようになった事ってあるんですが、自分みたいな凡人でもここまでできたんだから他の人でもやればできるよなって思ったりしますから。
要は自分の事を天才だとは思ってないから、自分にできた事は誰にでもできる普通の事みたいに思えるんですよね。
だって自分は凡人だし、普通の人間だし、遥かに手の届かない天才は他にいるし。
でもちょっと待ってください、実はそれってけっこうすごい事だったりするんですよ。
自分にとって簡単な事がみんなにとって簡単とは限りません。これを忘れないように。
それを忘れて軽々しく「誰にでもできる」って言わない方がいいです。
それができない人からしたら嫌味になってしまいますから。
ちょっと気をつけましょう。
人にはそれぞれ適正がある
人にはそれぞれ適正というものがあります。誰かにとって大変な事でも自分にとっては簡単にできる事って誰にでもありますよね?
「何でコレができないの?簡単じゃん」
って思う事って誰にでも1つや2つあると思うんです。
でもそれはたまたまあなたに向いていただけの事なんです。適正だったんです。
それに気付かず誰にでも簡単にできると思って「お前にもできるよ」なんて軽はずみに言うと嫌味になってしまいます。
例えば、もしもフィギュアスケートの羽生選手が
「4回転ジャンプなんて誰にでもできますよ、だって僕でもできたんですから」
なんて言ったらどう思います?
「はぁ?お前は天才だからだろ、4回転ジャンプなんてそう簡単にできるかよ、誰でもできるとかありえないから」
って思いますよね?
まぁこれは極端な例なんですが、自分にとって容易くできる事を相手にも簡単にできるみたいに言うのはこういう事を言っているようなものです。
そう考えるとあんまり軽はずみに言ってはいけない言葉だと思いませんか?
誰かにとっては5の努力でできた事も、人によっては10努力してやっとできる事だってあります。
こういう差をちゃんと理解せずに言っている軽すぎる発言になってしまいますから。
同じ事をやっているのに自分じゃ超えられないハードルを簡単に越えていく人がいるけど、自分じゃどうやっても越えられない事ってありますよね。
そういう感覚を忘れずに軽はずみに「お前にもできる」とか言わない方が良いです。
適正のない人間には厳しく辛いだけになることもありますから。
できない人にはいくらやってもできない事もあるというのは忘れないようにしましょう。
優越感に浸ってない?
自分にできる事をできない人に「俺でもできたんだからお前にもできる」って言ってる時ってちょっと優越感に浸ってたりしませんか?「そんなつもりないよ」って思う人もいるかもしれませんが、そこには決定的な差が生まれてるじゃないですか。
「今できる自分」と「今はまだできない相手」という決定的な上下関係が。
こういう状況に知らず知らずの内にちょっと気持ちよくなってたりしませんか?
言ってて気持ちよくありません?明らかに上に立てているという現実が。
私は多かれ少なかれ優越感に浸ってこういう言葉を言ってるんだろうなと思っています。
言われた側からすると上から目線で余裕を見せ付けられてるようで気持ちのいい言葉ではなかったりします。
「そりゃお前には簡単だったかもしれないけど俺には難しいんだよ」って言いたくなりますから。
あなたが優越感に浸っている分だけ、言われた相手は悔しい思いをしてるかもしれませんよ?
そう考えると決して良い言葉ではありませんよね。
結局の所、そのレベルに達するにはかなりの努力が必要です。
あなたもそのレベルに達するまでかなりの努力をしてきましたよね?
本当に相手にもその努力と同じくらいの努力ができると思っていますか?
誰にでもできるという事は、みんなその努力を当たり前にできるという事になります。
そんなの分かりませんよね?できない人だって出てきますよね?
何かを成し遂げるには努力が必要、その頑張ってきた過程を無いような感じにして誰にでもできると思うなって話です。
中には自分はそんなに頑張ってなかったような印象を持っている人もいるかもしれませんが、それはどうしてもやらなければいけない状況だったか夢中だっただけです。
興味があって楽しくて夢中になっている時って他の人から見たら努力と思われる事でも苦じゃなく楽しくできますよね?
何度失敗しても修正して成功まで持って行こうとする、何百回でも同じ事の繰り返しを練習できるとか。
これはどう見ても大変な努力ですよね。でも夢中な内にやっていたから楽しくてそんなのに気付かなかっただけです。
死ぬほどの努力を知らず知らずしていたのにそうでもないみたいに感じるのはそれがあなたにとって適正で楽しかったからでしかありません。
これからはそこまで適正じゃない人がやるには高い高いハードルになるというのを忘れないようにしましょう。
みんながみんな同じモチベーションで努力できるわけじゃないんですから。
それにできるようになるまでの過程の中で運もあったでしょ?何か分からないけど上手くいったんだよねみたいな。
そういう要素も無視して簡単に「お前にもできる」とか言ってしまうのはよくないと思います。
できるようになった余裕を見せ付けてるだけにしか思えませんから。
優越感に浸ってるつもりはないのかもしれませんが、知らず知らずの内に浸ってしまっている現実をちょっと受け入れてみてください。
最後に
自分にできたからって誰にでも簡単にできるとは思わない方がいいですよ。まぁ気持ちは分かるんですけどね。私もこういう事をけっこう言いがちだったんで。
現に自分程度の人間にできた事なんだから誰にでもできるような気がしないでもないですし・・・
でも改めて自分が言われた時に気付きました。
なんてクズだったんだ・・・偉そうに上からものを言って・・・優越感に浸るクソ野郎じゃないかって・・・
自分に適性のない事なのにその分野で成功した人から言われると、そこに至るまでの努力を今から必死で頑張ってしろよって強制されてるようで腹が立ちます。
「お前には向いてただけだろ」って話ですしね。誰にでもできるというのは間違ってると思います。
現に、私が簡単にできる事でもできない人は山ほどいるわけですしね。やっぱり適正ってあるんだと思います。
結局の所、こういう言葉を言いがちな人はもっと適切なアドバイスに切り替える必要があります。
「コレをこうするにはこういう感じにやって、こういう風にすると良いよ」みたいに。
ただ単に「俺にもできたんだからお前にもできる」って言われただけじゃ何の為にもなりませんからね。
そういう言葉を言うなら具体的にレクチャーしてあげた方がずっと為になりますから。
言われた人にとっては大変な事なんですから、できる人はできる限り丁寧な指導をする方がいいです。
でなきゃただ優越感に浸って気持ちよくなるためだったとしか思えませんから。
そして指導後には「俺でもできたんだからお前にもできる」なんて間違っても言っちゃダメですよ。
謙遜のつもりでもそれは余計な一言です。相手はそこまでのレベルに達する事ができない適正の持ち主かもしれないんですから。
余計な言葉を言わず「頑張ってね」の一言で済ませればいいと思います。
「俺でもできたんだからお前にもできる」「自分でもできたんだから誰にでもできる」
こういう言葉を言いがちな人はちょっと考え方を改めて余計な事は言わないように切り替えた方がいいですよ。
ホント、相手にとっては侮辱以外の何ものでもない言葉ですから。
「人には適正がある」「自分にできたからって他の人にできるとは限らない」
この基本をよく理解して発言に気を付けてみるといいと思います。