人生詰んだニートのブログ

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「これからの角換わり腰掛け銀」のレビュー

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同型腰掛け銀は先手有利という1つの結論を出した富岡流が出てから、後手は同型を避けるようになりました。


そのため、先手、後手共に様々な工夫をするので最近は腰掛け銀と言っても色々な形が出てくるようになりましたよね。


今までとはちょっと違う攻めの形、受け方の違いなんかにちょっと苦戦している人もいるかもしれません。


私はそんな苦戦している1人です。


「な~んか良い攻め筋が思いつかないな~、受けるのもなんかうまくいかないな~」


って悩んでたんですよ。新しい時代についていけない典型的なダメ人間ですね。才能のなさにガッカリします。


そんなよく分からない新しい形を専門的に詳しく解説されているのが今回紹介するこの本「これからの角換わり腰掛け銀」なんです。




後手が同型を避けた時の先手の対策がギッチリ詰まった角換わり腰掛け銀の専門書です。


ホント中身が濃いです。


同型腰掛け銀の富岡流の解説から始まり、後手が同型を避けた場合の細かい形の違いをしっかり解説。


さらに後手の新作戦、桂頭攻め4二飛作戦、というちょっと変わった戦法まで解説されています。


おまけに先手からの奇襲作戦、4五桂速攻4五銀速攻の2種類も解説。


後手が同型を避けた時の変化だけでもお腹一杯なのに、さらに後手の工夫や先手の奇襲まで解説してくれるなんて・・・


これ以上ない位ギッチリ角換わり腰掛け銀の手順が詰まっています。


読みきるのがちょっと大変でしたね。頭に入りきりませんよ。


プロはこれを全部知ってるのが基本であって、さらにプラスアルファがなきゃ戦えないんだから、プロのすごさを垣間見た感じです。


そんな角換わり腰掛け銀の変化がたくさん詰まった本書ですが、具体的にどんな感じなのか紹介しようと思います。


第一章 同型腰掛け銀

最初は同型腰掛け銀の解説から始まります。


第1節 富岡流

まずは先手有利の結論が出た富岡流から。富岡流というのはこの手です。(下図)



ここから△2二同金 ▲3三銀 と進みます。


同型の局面からどうやってこの局面になるの?という方にも安心な、同型の基本図からこの局面に至るまでも解説しています。


紛れのない歩の突き捨ての順番から解説しているので基本から知らない方にも役立ちます。


そして富岡流になってからの後手の3つの候補手△3八飛、△4一玉、△3三同桂をザッと解説されています。


最後の詰むや詰まざるやの変化は知っておかないと怖くて指せません。一通り暗記しておきましょう。


富岡流を詳しく知りたかったら他の本を読んだ方がいいかもしれませんが、とりあえず流れだけを知るなら本書でも充分です。


第2節 8一飛

次に解説されているのは8一飛です。(下図)



先ほど、ここで飛車を引かず△4四銀 として富岡流になり後手が負けました。


なので富岡流を避けるための後手の変化です。


後手の狙い筋と先手の対応を4ページであっさりと解説しています。


上の図をみて▲7二角 と打ち込みたくなった人は要注意ですよ。やられます。


でも他の手となるとどうすれば・・・という方はこの本で対応策を学びましょう。


第3節 ツツカナ新手

同型の最後は将棋ソフトのツツカナが指した工夫、ツツカナ新手の解説です。


ツツカナ新手とは同型の一歩手前の局面(下図)から



△6五歩 ▲同歩 の突き捨てを入れて△3三銀 と手を戻した形を言います。(下図)



攻め合いを目指した新手ですが、これの先手の対策が1つ簡単に解説されています。


一応、同型はどの変化も先手有利という結論で終わっています。これでようやく後手が同型を避ける変化に入れるわけですね。


このように同型腰掛け銀の変化は簡単に解説されているだけなので同型の変化を細かく知りたかったら他の本で学びましょう。


第二章 7四歩型

ここからが本書のメイン、後手が△7三桂と跳ねず同型を避けた変化です。(下図)



この▲4八飛 に△2二玉 ▲8八玉 △4二金右 と囲った所から先手の様々な形の仕掛けが始まります。それらを詳細に解説しています。


第1節 ▲2五桂

積極的な攻めの一手▲2五桂 の解説から始まります。(下図)



なぜ後手は△4三金右 じゃなく△4二金右 なのかの解説から。


このちょっとした形の違いにも駆け引きがあって面白いです。


▲2五桂 の変化はタイトル戦の棋譜を参考にして激しい変化を細かく解説しています。


メチャクチャ怖い変化ばかりですね。私ならどちらを持ってもあっという間にやられてますよ。


これからはのん気に▲2五桂 とかできなくなりました。


角換わり怖すぎる・・・


第2節 ▲2五歩

ちょっと力を溜める▲2五歩 の解説です。(下図)



ここからは後手に一手指させてから攻めるという高等戦術の解説になります。


後手が△4三金直 と指してからの先手の攻めは参考になりましたね。何となく攻めのイメージが掴めた気がします。


後手もヘタな手を指すと不利になるので注意が必要です。


この本を読んで不用意な手を指さないようになりましょう。


第3節 ▲1八香

次は一手パスの▲1八香 です。(下図)



角の打ち込みに弱くなりますが、それでもパスするメリットがどれくらいあるのかがポイントです。


後手を持っていかに不利にならないように注意するかが大切な局面ですね。


後手番でどうしたらいいか分からないならこの本を読む価値はあります。


第4節 ▲6八金右

2章の最後は玉を固める▲6八金右 です。(下図)



玉が固いので激しく攻める事ができるのが特徴です。


お互いに穴熊も含みにした駆け引きがあって今までとは違った面白さがあります。


ただ、単純に穴熊に組もうとすると激しい攻撃を受けて一気に潰れるので注意が必要です。


この攻め筋はとてもためになりました。角換わりってちょっとスキを見せると終わるから怖いですよね。


第3章 △7三歩型

第2章の△7四歩型では常に飛車のコビンを狙われる筋がありました。


要はスキがあったんですね。


じゃあスキのない形で駒組みをしたらどうなるの?というのが△7三歩型です。(下図)



7筋をついてないと今までの攻め筋が使えないのでけっこう先手も大変です。


後手が穴熊に組む変化や、手待ちをしつつ機を見て△7四歩 を付く変化など、新しい後手の有力な対策を見る事ができます。


そこで先手も駒組みの段階から工夫をするんですが、ここから先は本書をご覧下さい。


先手の工夫もけっこう面白くて読み応えがありますよ。


第四章 △6五歩型

第四章では今までの先手の▲4八飛型の攻めを封じる△6五歩型の解説です。(下図)



先手は理想の形から攻めに行きたいので、そのチャンスをうかがうため、この章ではパス合戦がメインになってます。


プロの対局でも見た事ありませんか?


金の上下運動とか飛車の往復とかでパスしあってる所を・・・


アレです。


後手は油断してると思わぬ攻めを食らってしまうので注意が必要です。


最新のパス合戦まで解説されていて、後手が正確に指せば先手もなかなか大変そうです。


正直、色々変化があって私はこれもよく分かってません。


この本を完全に理解しないと使えないので角換わり腰掛け銀を指しこなすのは当分無理そうですね。


第五章 後手の桂頭攻め

第五章は先手の攻め駒を責める、後手からの桂頭攻めです。(下図)



油断ならない攻めです。


うっかり後手の思惑通りに進んでしまうと、先手は攻め手を失って何もできなくなってしまいます。


これの受け方と反撃方法を知らないとやられた時にけっこう困りますよ。


この章ではしっかりと後手からの攻めを受ける方法を学びましょう。


上図の△5二金型の局面だけじゃなく△4三金型(下図)


△4二金 ▲1八香型(下図)


▲6八金右型(下図)


▲6八金右 △4三金型(下図)


△7三歩 △4三金型(下図)


△7三歩 △4二金型(下図)


と色々な局面での桂頭攻めを解説されているのでとても参考になります。


それぞれの特徴をしっかり理解して、やられても大丈夫なように対策をしておきましょう。


第六章 △4二飛作戦

ちょっと変わった作戦△4二飛作戦を紹介しています。(下図)



狙いは飛車で4筋を支え、△6五歩から先行する事です。


まだ定跡が整備されてない珍しい戦法なので、とりあえず後手の成功例を見てどんな戦法なのかイメージするといいですね。


一例を細かく解説されてますが難しいです。


ちょっとビックリ戦法として試してみると面白いかもしれません。


第七章 先手の奇襲

序盤から仕掛けていく奇襲戦法を2つ紹介しています。


第1節 ▲4五桂速攻

まずはこちら、▲4五桂速攻です。(下図)



最近、コンピューターに似たような事をやられてけっこう困ってる戦法だったりします。


先手の成功例がメインに解説されているので、後手がしっかり受けきるにはどうしたらいいかよく分かりません。


サラッと「こんな攻め方がありますよ」程度なので詳しくは違う本を参考にした方がいいです。


序盤の駒組みに神経を使うのでやっかいな戦法が出てきたなぁという印象です。


第2節 ▲4五銀速攻

次は、▲4五銀速攻です。(下図)



いきなり銀をぶつけるガッチャン銀みたいな戦法ですね。


銀を手持ちにすると角と銀で相手のスキをついて攻め込めたりするのでこれも油断ならない戦法です。


銀交換する変化と、△5五銀 とかわす変化が解説されてます。


どちらも有力なので、もし仕掛けられるならやってみるといいですよ。


多分、あまり知られてないのでやられたらけっこうビックリすると思います。


最後に

全七章のボリュームたっぷりな本です。


本当に1ページ1ページの内容が濃く、手順がビッシリ詰まったすごい情報量なので読むのがけっこう大変かもしれません。


でもその分、とても参考になる本です。


角換わり腰掛け銀を学ぶならこんなに良い本はないです。


この本を読む時は、盤と駒かソフトがあった方がいいと思います。


図から図までの手順が、長いと20手とかあって頭で並べるのはけっこうしんどいです。


途中の分岐の手順も長くて大変です。これも長いと20手とか・・・


分岐の場合は結果図がない時もあるからキツイ。


駒を取り合う激しい変化が多いので頭で理解するのは本当に難しかったです。持ち駒とか忘れちゃいます。


それに、終盤の変化は難しくてよく分からないのでソフトの手を借りるとより効果的かと思います。


ちゃんと詰みまで理解しないと怖くて指せませんから。


正確に頭で並べられる高段者はいいけど、まだまだ曖昧な初段前後なら盤と駒を使ったほうが無難です。


頭だけで理解しようとすると正確に理解できないし疲れますから。


まぁ頭で並べるトレーニングとしてなら難易度が高くて良いかもしれませんけどね。


私が読んだ感じだと、この本は細かい解説がしっかりついた質の高い棋譜並べとして利用するのが良いと思いました。


同型じゃない角換わりの指し方がよく分からないという方にはとてもオススメの本なので、ぜひ読んでみてください。