今回は、先手番「郷谷さん(上級)」が四間飛車をやってきた時に
「△6四銀(左銀)急戦」
を使って見つけた1つの勝ちパターンを紹介します。
郷谷さんの四間飛車に急戦を使うと
・シンプルに急戦を受けるパターン
・角交換をしてくるパターン
の2つがあるんですが、今回は「シンプルに急戦を受けるパターン」の攻略になります。
定番の急戦定跡と似た流れになるので、定跡の勉強と思って軽い気持ちでご覧ください。
先手の四間飛車を△6四銀(左銀)急戦で倒す
先手が「郷谷さん(上級)」、後手が「私」です。
今、郷谷さんが
「攻められている所に飛車を回れ」
という振り飛車の格言通りに▲7八飛 と回った所です。
ここから急戦の中では穏やかな手順で進めると勝ちやすいパターンに持っていく事ができます。
もし、「ここまでの手順が分からない」という方がいましたら「羽生の頭脳1」で詳しく解説されているのでそちらをお読みください。
古い本ですが、対四間飛車への急戦の基礎を学ぶなら最適です。
△7五歩 と抑える穏やかな急戦定跡がオススメ
上図以下、△7六歩 ▲同銀 △7五歩(下図)
と抑えるのが穏やかな展開になる一手です。
この△7五歩 の代わりに
・△7二飛
・△8六歩 ▲同歩 △7二飛
と指すと激しい捌き合いになる急戦定跡になります。
この展開は研究をしていないと怖いので、私は比較的穏やかな流れになる△7五歩 をオススメします。
こちらなら研究してなくてもいきなり劣勢になる危険も少なくて力を出せると思いますから。
ここから銀を立て直しゆっくり抑え込む形に駒組みを進めます。
上図以下、▲6七銀 △7三銀引 ▲5九角 △7四銀(下図)
△7三銀引 ~ △7四銀 と銀を繰り替えて7筋の位を確保し、抑え込みの体制を作ります。
上図以下、▲5七金 △7二飛(下図)
私がこの定跡を覚えた20年くらい前、振り飛車が▲5七金 のように6筋を支えた場合、△7二飛 と7筋を支えるのが大切と言われていました。
この手を指さず△6四歩 などを指してしまうと▲7六歩(下図)の合わせから位を奪還される危険性があったからです。
上図以下、△7二飛 ▲7五歩 △同銀 ▲7六歩 △8四銀(下図)
となると失敗として打ち切っている定跡書もありますしね。
ただ、Aperyで検討したら上図のように位を失って銀を△8四銀 と引かされる展開も互角だったので、もっと先まで検討するとそこまで悪くないのかもしれません。
ただ、こうなるとちょっと面白くないので△7二飛 と支えるのが無難だと思います。
穏やかに駒組みを進めます
上図は△7二飛 と7筋の位を支えた所です。
ここからはお互いに急な仕掛けがないので駒組みを進める展開になります。
上図以下、▲3六歩 △6四歩 ▲4八角 △5三銀 ▲4七金(下図)
お互いに陣形を整えてスキがない形になりました。
実はこの局面、この戦法を使い始めてからずっと悩んでいる局面だったりします。
イマイチ仕掛けが上手くいかなくて答えが見つかってないんですよね・・・
△6五歩の仕掛けは先手の角が捌ける展開になりますし、他の手となるとパッとする手もありませんし・・・
もしこの局面で居飛車有利になる決定打を知っている方がいましたらコメントで教えてください。
長年悩んだ結果、指す手がないと判断した私は
「千日手でもいっか・・・どうせ後手番だし・・・」
と相手から動く展開を待つようにしています。
その一手がこちら。
上図以下、△8二飛(下図)
角が4八にあって飛車先が受かってないので相手も対応する必要があり、場合によっては千日手になる一手です。
上図以下、▲5九角 △7二飛 ▲4八角 △8二飛 ▲5九角 △7二飛・・・
となれば千日手ですから。
お互いに動くに動けない感じはあるんですよね・・・
しかし、郷谷さん相手にこの諦めの一手を指したことで攻略法が見つかりました。
実戦は上図以下、▲5九角 △6二飛 ▲4八角 △8二飛 と千日手模様に進め、引き分けで指し直しかな・・・
と思っていたんですが、郷谷さんが変化してきました。
それがこの一手です。
▲8八飛(下図)
角筋に飛び込んでくる飛車・・・
「これはいけるんじゃない?」
と思い攻めを決行しました。
角筋に入った飛車を攻める
上図以下、△6五歩(下図)ちょっと気持ちのいい一手ですよね。
「▲8八飛 は郷谷さんの悪手?」
と思っていたんですが、Aperyで検討すると次善手でした。
そう簡単にはいかない新しい定跡に入っています。
上図以下、△7七歩(下図)
こうやってシンプルに受けられると一筋縄ではいきません。
私の実戦の前にAperyで検討した手順から紹介します。
上図以下、△6六歩(下図)
と取り込むのが最善らしいんですが、ここから2通りに分岐します。
△6六歩に▲同角
まずは ▲同角(下図)と取ってきた変化から。上図以下、△6六同角 ▲同銀 △6五歩 ▲5七銀 △9九角(下図)
と飛車を8筋からどかして後手やや良しです。
ちょっと面白い変化もあったので続きも書きますね。
上図以下、▲5八飛 △8六歩 ▲5五歩 △同歩 ▲5六銀(下図)
紹介したかったのがこのタダで銀を捨てる一手です。
取れば ▲5五角 の「飛車」「香」の両取りになります。
悪あがきではありますが、意外と油断ならない一手で「ここからApery相手に勝ち切って」と言われると難しいです。
ここは誘いに乗らず、無難に収める方がいいみたいです。
上図以下、△6六歩(下図)
と取れる銀を相手にしない手が最善だそうです。
上図以下、▲6八飛 △8七歩成 ▲6六飛 △6三歩(下図)
と冷静に局面を落ち着けるのが良いみたいです。
後手は と金 さえ動かせれば速い攻めがあるので慌てる必要はないという事なんでしょうね。
△6六歩に▲同銀
次は △6六歩 に▲同銀(下図)と応じてきた手順です。こちらが本筋ですね。
上図以下、△6四銀 ▲6五歩 △同銀右 ▲同銀 △同銀(下図)
銀を捌いてサッパリさせるのが先手の方針でした。
上図以下、▲4五歩 △6六歩 ▲3七角 △7三銀(下図)
居飛車は冷静に受ける方針で先手の捌きを抑えます。
上図以下、▲5八金 △8四飛 ▲5七金上 △6四銀(下図)
と銀で厚みを築き、後手やや良しというのがAperyの結論です。
この手順が▲8八飛 と受けられた時の基本になります。
郷谷さんに有効な△6二飛
上図は △6五歩 の仕掛けに ▲7七歩 と受けた所です。
Aperyはここで △6六歩 と取り込むのを推奨していましたが、郷谷さんには次の一手も有効です。
上図以下、△6二飛(下図)
6筋から押し込んでしまおうという一手です。
もしここで先手も ▲6八飛 と受けに回ってきたらまた △8二飛 と回り、また ▲8八飛 と受けさせて
・千日手を狙うか
・先ほどの△6六歩 と取り込むAperyの手順で攻めるか
を選んでください。
郷谷さんはここで ▲6八飛 ではなく▲6五歩(下図)としてくることもあります。
こうなると後手優勢になり、角筋を使って攻める展開になります。
上図以下、△6五同銀 ▲2六角 △6六歩 ▲7八銀 △7六歩(下図)
こうなると気持ちよく攻め込めます。
上図以下、▲5七金 △7七歩成 ▲同銀 △7六歩(下図)
飛車のコビンをひたすら攻めます。
上図以下、▲5五歩 △同角 ▲5六歩 △2二角 ▲7八歩(下図)
ちょっと混乱したのか5筋で一歩をムダにしてから ▲7八歩 と受けました。
こうなると勝ちも目前ですね。
上図以下、△7七歩成 ▲同歩 △7六歩 ▲5九角 △7七歩成 ▲同角 △7六歩(下図)
しつこすぎる△7六歩で徹底的にコビンを攻め続け、ようやく決まりました。
上図以下、▲6三歩 △同飛 ▲7八飛(下図)
ここでちょっと油断ならない ▲7八飛 という一手が出ました。
優勢を維持するために大差で勝ち切ろうと欲張ると危ない罠が潜んでいます。
上図以下、△7七歩成 ▲同桂 △7六銀(下図)
▲7七同桂 が銀に当たり、銀を桂頭にかわした所で振り飛車らしい一手があります。
上図以下、▲6五桂(下図)
飛車と桂馬による銀の両当たりです。
さっきまで大差で勝ち切れそうだったので、ここでも差を広げようと欲張ってしまうと逆転を許す展開になりがちです。
なので多少の犠牲は受け入れます。
上図以下、△7七歩 ▲5三桂成 △同金直(下図)
銀を1つ取られるのは諦めて冷静に飛車を抑えるのが大切です。
上図以下、▲4八飛 △6七歩成 ▲4七金(下図)
ようやく抑え込みが完了し、あとは寄せるだけです。
攻略的にはここで終わっています。
あとは毎度おなじみ、私の筋悪で鈍足な寄せの時間なのでお暇な方のみご覧ください。
優勢からの鈍足の寄せで差が縮まる
上図以下、△5七銀(下図)「飛車を取っちゃえば早いかな?」
と直接ぶち込んだ △5七銀 が筋悪の一手でした。
Aperyによると、ここは △6六角 と覗き、△5七と とゆっくり と金 で迫るのが正着だったようです。
上図以下、▲7二銀 △6四飛 ▲8一銀成 △4八銀成 ▲同金引 △8九飛(下図)
銀でさりげなく桂馬を拾われ、飛車を打ち込みましたがイマイチ効率が悪い感じがします・・・
上図以下、▲9一成銀 △5七と ▲同金 △6九飛上成 ▲5八銀 △7九竜 ▲2六桂(下図)
と金 を捨てて飛車を成り込みましたが、ガッチリ銀ではじかれ急所に桂馬を打たれました。
ここから地味に距離が詰まっていきます。
上図以下、△7八歩成 ▲3四桂 △3三角 ▲4二桂成 △同角 ▲3四香(下図)
△3三角 では △7七角成 と馬を作った方が良かったですね。
気が付けば歩切れを突かれた香打ちを食らい地味に嫌な展開です。
上図以下、△3三桂打 ▲同香不成 △同桂 ▲3四桂 △3一角(下図)
ここでもし指されていたら困る手順がありました。
上図以下、▲2二金 △同角 ▲同桂成 △同玉 ▲9七角(下図)
「竜」と「金」の両取りです。
Aperyの評価値ではまだまだ後手有利なんですが、こうなっていたら長引いて嫌な展開になっていましたね。
実戦はそう進まず、▲2二金 ではなく▲4七金(下図)と指したのでどうにか終わりが見えました。
上図以下、△6八と ▲6九歩 △5八と ▲同金 △6九竜 ▲5九金打 △5八竜(下図)
で郷谷さんの投了となりました。
以下、▲同金 には △3九角 からベタベタとシンプルに王手を掛けて詰みです。
今回もグダグダしてしまったので、もうちょっとスパッと決められる終盤力が欲しいですね。
最後に
後手番で「郷谷さん(上級)」の四間飛車に勝ちやすいパターンを紹介してみました。「△6四銀(左銀)急戦」での穏やかな展開に持ち込み、千日手狙いの飛車の往復で「▲8八飛」と受けてくれたら狙ってみてください。
今回のような展開に進み、角で飛車を睨みながらの気持ちいい攻めが決まりますから。
郷谷さんになかなか勝てないならお試しください。
さっそく試したいという方は下記のリンクからどうぞ。