きのあ将棋の「郷谷さん(上級)」との実戦譜を紹介します。
今の所、郷谷さん攻略に有効と思われる「三間飛車藤井システム」で挑んた一局です。
中盤、決め手だと思った一手が悪手だった「勝手読み」がポイントになります。
将棋の読みは
「こうなったら良いな」
ではなく
「こうなったらダメだな」
と考えるのが大切で
「ダメな手を切り捨てた先に最善手がある」
と言われたことがありますが、それを痛感する一局でした。
自分勝手な読みで形勢を損ねる甘さをご覧ください。
「三間飛車藤井システム」に早めの角引きをされた一局
先手が「郷谷さん」、後手が「私」です。上図は、居飛車の持久戦に三間飛車藤井システムで駒組みを進めている所です。
私なりに攻略した手順通りに指すとだいたいこの局面になります。
ここまでの手順については下記の記事をご覧ください。
【きのあ将棋】「郷谷さん *まじめ」に後手番で勝つヒント 「三間飛車藤井システムでの注意点」 - ダメ人間ブログ【ニートの愚痴と将棋の記録】
上図から▲8八玉 と囲いにいく事が多いんですが、今回はちょっと違う手でした。
それがこちら。
上図以下、▲6八角(下図)
角を引いて2筋からの攻めを狙う一手です。
このままだと危険なので受ける必要がありますね。
・居玉を避ける△6二玉
・シンプルに2筋を受ける△2二飛
とするのが無難です。
「受けないと何が危険なの?」
と疑問がある方のために、まずは振り飛車の基本として知っておいた方がいい変化を紹介します。
振り飛車の注意点、引き角からの強襲を受けなかったら・・・
▲6八角 に対し、無策に△5二金左(下図)と駒組みを進めた場合、大変な事態になります。
上図以下、▲2四歩 △同歩 ▲同角(下図)
居飛車は飛車先を突破しようと角を飛び出してきます。
この時、居玉なのが悪く、定番の受けが通用しません。
上図以下、△2二飛(下図)
居玉じゃなければこの飛車寄りでどうにかなるんですが、この場合は大悪手です。
上図以下、▲3三角成(下図)
この角成りが王手になってしまうのが致命傷です。
△3三同桂 と取るしかなく▲2二飛成(下図)と飛車を取られて負けになります。
△5二金左 の代わりに△6二玉 と囲っていれば▲3三角成 が王手じゃないので△2八飛成(下図)と飛車を取って逆に振り飛車優勢になります。
もしウッカリ飛車先を受け忘れて▲2四角 と出られてしまった場合、投了してもいいですが頑張るなら以下の手順と方法しかありません。
△2四同角(下図)
とシンプルに角を取り
上図以下、▲2四同飛 △2二歩(下図)
と盤上では完全に失敗を認めます。
ただ、盤外では
「角を持ち駒にしたかったんだよな~」
と笑顔でつぶやき余裕を見せるハッタリをかまして、相手に「え?」って思わせましょう。
あまりに堂々と悪手を指すと
「もしかして何かあるのか?」
ってちょっと怖くなるかもしれませんから。
昔、先生がウッカリして5手詰めの詰めろを受けず、堂々とこちらに詰めろを掛けてきた時、
「え?詰まないの?俺の読み違い?」
と不安になって5分くらい読み直した私のように、格下の相手には有効です。
△2二飛 と無難に受けました

上図は、▲6八角 に対し、無難に△2二飛 と受けた所です。
Apery的には△6二玉 が推奨でしたけどね。
上図以下、▲8八銀 △5二金左 ▲3六歩 △4五歩 ▲7七角 △6二玉(下図)
めずらしい▲8八銀 に対し、とりあえず角道をあけて攻めの準備をしてから△6二玉 と一手だけ囲いました。
ここで評価値が0という完全な互角になっています。
勝手読みの悪手
上図以下、▲1六歩(下図)と指され、ちょっとヌルい手に感じた私はチャンスと思い仕掛けます。
上図以下、△2四歩 ▲同歩 △同角(下図)
次に強引な角成りの王手から△2八飛成 と飛車を素抜く手を見た一手で
「防ぐの難しくない?」
と思っていたんですが、これが勝手読みの悪手でした。
局後のAperyの検討で恐るべき一手が示され、一気に後手不利になります。
それがこちら。
上図以下、▲3五歩(下図)
軽く突かれた歩で痺れました・・・
角が動けない上に次の▲6五歩 が受けにくい・・・
以下、△2三飛 と浮いて角筋を受けるくらいですが、動きを極端に制限されどうしようもありません。
一気に捌くはずだった一手を逆用され縛られてしまいました・・・
そりゃそんな簡単に勝負が決まったら苦労しないですよね・・・
次から気を付けないと・・・
悪手に悪手を返され優勢に
▲3五歩 と指されていたら負けだったんですが、郷谷さんが指したのはこちらでした。上図以下、▲3七銀(下図)
飛車に紐をつける一手ですが、これは悪手で後手優勢になります。
上図以下、△2七歩 ▲5八飛 △3三角 ▲1五歩 △8五桂(下図)
△2七歩 を▲同飛 と取ってくれたら今度こそ飛車の素抜きが成功します。
飛車を逃げ、相手からの攻めが遅れたのでこちらから先行しました。
上図以下、▲5九角 △6五歩 ▲8六歩 △6六歩 ▲5七金 △6五銀(下図)
△8五桂 で角をどかし、角筋を利用して6筋から殺到する定番の攻めが始まります。
ここからAperyと一致した攻めをする奇跡が起きる
上図以下、▲8五歩 △7六銀 ▲6八金(下図)桂馬を捨てて銀を進出し、一気に攻めます。
上図以下、△6七歩成 ▲同金上 △同銀成 ▲同玉 △6五歩(下図)
▲6七同玉 と取られて次の攻めが難しい感じがあり、
「ぬるいけど拠点を作って次の6六への打ち込みを狙うしかないか・・・」
と妥協して指したのが△6五歩 でした。
疑問手だと思っていたんですが、局後にAperyで検討したらこれが最善手と示していて驚きました。
ここはこれで良かったみたいです。
こんな手が最善だとは・・・将棋はよく分かりません・・・
上図以下、▲7八玉 △6六金(下図)
玉を逃げられましたが他に手もないので予定通り金を打ち込みます。
上図以下、▲6四桂 △2八歩成(下図)
△6五銀 から始まった攻めはこの△2八歩成 までAperyと一致していました。
ここから先はいつもの私らしい鈍足感が出ます。
ここからいつもの展開
上図以下、▲5二桂成 △同金 ▲8二金(下図)金を打ち込まれ、ここからしつこく絡まれる展開を嫌って受けに回ります。
上図以下、△6三銀 ▲6四歩 △同銀 ▲7二銀(下図)
受けに回ったのに結局からまれる展開になっています。
この▲7二銀 は油断ならない手で、金を渡すと▲6一金 から詰まされます。
こちらからの攻めは金を渡す展開ですし、先手から見ても欲しい金が6六に落ちているのでウッカリすると終わりです。
上図以下、△5一玉(下図)
「ここでトン死は嫌」
と玉を逃げた手が地味に好手で、これで金を渡してもしばらく安全で攻めに専念できるようになりました。
上図以下、▲2三歩 △同飛 ▲6六金 △同歩 ▲2八飛(下図)
先手も勝負をかけて飛車交換を挑んできます。
ただ、これはさすがに無理だったようで後手勝勢になりました。
とは言っても、安全勝ちを狙って飛車交換を避ける△2七歩 なんて手を1分くらい考えた辺り、まだまだですね。
上図以下、△2八同飛成 ▲同銀 △5八飛(下図)
このシンプルな飛車打ちが強烈で先手は困っています。
上図以下、▲6八角 △7六桂 ▲6一飛 △4二玉 ▲6九歩(下図)
となり、ここから詰みがあります。
実戦詰将棋を出題します

お時間のある方は最後に上図の実戦詰将棋をお楽しみください。
私は全部は読み切れてませんでしたが、郷谷さんが比較的簡単な手順で逃げてくれたので詰ますことができました。
答えは数行下に書きますので、ちょっとお考え下さい。
では答えです。
上図以下、△8八桂成 ▲同玉 △6七歩成(下図)
の角による開き王手から詰みます。
まずは玉を逃げる変化から。
▲9七玉 の場合・・・
上図以下、▲9七玉(下図)と逃げた場合はこうなります。
上図以下、△8六金 ▲同玉 △7五銀 ▲9七玉 △8六銀打(下図)
と上から押さえていって詰みます。
先手としては最初の△8六金 も最後の△8六銀打 も▲同角 と取ると△8八飛成 で詰むので取れないのが辛いですね。
上図以下、▲9八玉 △6八飛成 ▲同歩 △8七角(下図)
角が王手で取れるのでピッタリ詰みました。
▲7七金 の場合・・・
△6七歩成 に▲7七金(下図)と合駒した場合は・・・上図以下、△7七同角成 ▲同桂 △8七金(下図)
角を切って玉の頭に金を打って詰まします。
上図以下、▲8七同玉 △7八銀 ▲8六玉 △7五銀 ▲9七玉 △8七金(下図)
までの詰みです。
実戦は▲5五桂 でした
実戦は△6七歩成 に▲5五桂(下図)と指してきましたが・・・上図以下、△6八飛成(下図)
で郷谷さんの投了となりました。
上図以下、▲6八同歩 △7九角(下図)
から詰みます。
上図以下、▲8七玉 △7八銀 ▲8六玉 △7五金(下図)
までの詰みです。
▲8七玉 で▲9八玉 と逃げるのは△9七銀 から詰みます。
最後に
勝手読みの悪手に対し、悪手で返してくれたおかげで勝てた一局でした。本局のポイントだった飛車の素抜きを狙った△2四同角(下図)
には、▲3五歩(下図)の返し技があるのでお気をつけください。
けっこう定番の一手らしいので、私のようにちょっと振り飛車をかじった程度の方はここで覚えて同じミスをしないようにしましょう。