きのあ将棋の「空 だめ子」になかなか勝てない初心者に向けて
「こんな感じに指せば勝ちやすいよ」
というちょっとしたコツを紹介します。
私なりに攻略した実戦譜を元に「指し手の意味」と「勝つためのコツ」を解説するので、漠然と手順を覚えるよりは役立つと思います。
「空 だめ子」に勝ち越して脱・初心者を果たしたい方はぜひご覧ください。
シンプルに飛車先を突こう
先手が「私」、後手が「空 だめ子」です。初手から、▲2六歩 △5二玉 ▲2五歩 △4二金(下図)
だめ子の攻略には余計な変化を生まないように
「ここぞという時」
まで角道を開けないシンプルな居飛車がオススメです。
最初の2手は飛車を活用するために2筋の歩を伸ばしてください。
まずは弱い角の頭(2三の地点)を狙うのが基本になります。
今回は、今から攻められる角頭を受けない△4二金 を指してきたのですでに先手やや有利になっています。
だめ子は角頭を受けないことが多々あるため、その欠点を突く正しい攻め方を知っていれば簡単に優勢に持っていくことができます。
上図以下、▲2四歩(下図)
いきなり仕掛ける▲2四歩 が優勢に持っていく一手です。
弱点をカバーしなかったので角頭を受けられず困っています。
上図以下、△2四同歩 ▲同飛(下図)
先ほどの△4二金 で△3二金 と指していれば△2三歩 と受けられたんですが、駒の利きがないのでどうしようもありません。
序盤早々、急所を突かれた後手の不利が確定しました。
上図以下、△6二銀(下図)
角頭の受けがないとはいえ、完全無視は流石に大悪手です。
次の一手で先手優勢になります。
上図以下、▲2三歩(下図)
これで角取りが確定し、わずか9手で将棋は終わりました。
飛車先を伸ばした時に角頭を受けなかった場合は、この攻めを狙って優勢になってください。
補足:悪いなりに最善の受けをしてきた場合の指し方
本局は角頭を放置する△6二銀 のおかげで▲2三歩 の角取りが決まりましたが・・・あの局面では△6二銀 ではなく△3四歩(下図)と角を逃がす手が最善になります。
この場合は優勢になるまでにちょっとコツがいるので一例を紹介しておきます。
▲2三飛成 と竜を作っても悪くありませんが、ここは「垂れ歩」の手筋を狙う方がいいです。
上図以下、▲2八飛 △3二金 ▲2四歩(下図)
飛車を成らずに▲2八飛 と深く引き・・・
▲2四歩 とちょっと控えた所に打つのが「垂れ歩」と呼ばれる一手です。
ぼんやりした手に見えるかもしれませんが、次に▲2三歩成 から2筋を突破する手を狙っています。
もし△6二銀 のような手を指してきたら、狙い通り▲2三歩成(下図)と指せばあっという間に先手勝勢です。
上図から詰みまでの指し方については類似形を解説した下記リンクの記事を参照してください。
補足として▲2四歩 を食らっても精一杯頑張る後手の受け方も紹介しておきます。
▲2四歩 には△2六歩(下図)と空中に打つのが受けの手筋です。
上図以下、▲2六同飛 △4四角(下図)
飛車が止まったままだと攻められないので▲2六同飛 と取りますが、飛車取りの先手で△4四角 と上がれるのが大きな一手になります。
上図以下、▲2八飛 △2二銀(下図)
これには▲2八飛 と引くしかなく、そうやって得た一手の余裕で△2二銀 と上がれば いきなり2筋突破を許す最悪の展開は避けられます。
でも、これはこれで2四の拠点が大きいので先手ペースです。
先手有利に持っていく一例としては・・・
上図以下、▲7八金 △6二銀 ▲7六歩(下図)
1回 ▲7八金 と陣形を整えてから▲7六歩 と角交換を狙い・・・
上図以下、△6四歩 ▲4四角 △同歩 ▲2三角(下図)
強引にねじ込む▲2三角 のような攻めが考えられます。
△2三同銀 と取ってくれれば▲同歩成 で2筋突破が確定します。
上図以下、△3三金 ▲3四角成(下図)
△3三金 とかわすのが最善の受けですが、▲3四角成 と捨て・・・
上図以下、△3四同金 ▲2三歩成(下図)
金を上部へ誘い、▲2三歩成 と「と金」を作れば先手の攻めは成功です。
ここから最善を尽くされるとけっこう難しいですが、垂れ歩の拠点を活かして攻めを続ける手順として覚えておくと役立ちますよ。
角を取ってからの指し方
補足が終わったので本譜へ戻ります。上図は▲2三歩 の角取りが確定した所です。
角を取っても勝ち切るまではけっこう難しいため、ここからは初心者向けに詰みまでの一例を紹介します。
上図以下、△3二金 ▲2二歩成 △同銀(下図)
金を寄ってガッチリ受けられるとすぐに攻める手はありません。
先手勝勢ではありますが慌てて攻めると跳ね返されてしまうため、ここから次の攻めを狙うじっくりした駒組みをしていきます。
上図以下、▲3八銀 △9四歩 ▲3六歩(下図)
将棋には
「攻めは飛車・角・銀・桂」
という格言があり、4枚の攻めの形を作るのが理想になります。
現状、飛車だけでは金銀の連結を突破できないので、まずは格言通り右銀を攻めに参加させる準備をします。
上図以下、△2三銀 ▲2八飛 △2四歩 ▲3七銀(下図)
後手はガッチリと受けの形を作りました。
ここから飛車をバックに銀を進出して2筋からの攻めを狙います。
上図以下、△2二金 ▲4六銀 △4四歩 ▲3五銀(下図)
飛車と銀の2枚の攻めになり2筋への攻めの形ができました。
いつでも▲2四銀 と攻め込むことができます。
ただ、2枚では攻めが細く心もとないので、慌てずに3枚目の攻め駒を追加します。
上図以下、△9五歩 ▲7六歩(下図)
ここで眠っていた角を開放します。
最初に角道を開けないのがオススメと書きましたが、それは角交換を狙われないようにするためでした。
もう後手に角がいないので安心して角道を開けてOKです。
今が「ここぞという時」ですね。
上図以下、△2五歩 ▲同飛 △3四歩(下図)
飛車を呼び込み攻めを催促してきました。
これは角を攻めに参加させた先手にとってありがたい展開です。
上図以下、▲2四銀 △同銀 ▲同飛(下図)
銀の交換ができてひとまず攻めは成功しました。
「攻め駒の銀」と「守り駒の銀」の交換は
「お互いが銀を持ち駒にしている」
ので同じように感じるかもしれませんが
「基本的には攻め駒の銀を持ち駒にした方が得」
と言われています。
理由としては
・攻めに使っていた銀をさらに自由に使える
・相手は守りの駒が1枚減って受けが薄くなっている
という現実的な損得が発生しているからです。
「攻め幅が広がりながら相手陣は弱くなっている」
というのはかなり大きな成果ということですね。
上図以下、△3三銀(下図)
単純に受けては勝ち目がない後手は飛車に当てながら守りの銀を投入します。
先手は慌てずに再度攻めの形を構築します。
上図以下、▲2八飛 △2三歩(下図)
しっかり受けられましたが、ここから締めに向かう寄せにいきます。
Aperyの筋の良い寄せを紹介します
上図は、意外としっかりしていてどこから攻めていいか分かりにくい局面かもしれません。
まずは最高のお手本としてAperyが示した寄せの手順を紹介します。
上図以下、▲3五歩 △同歩 ▲1六角(下図)
軽く▲3五歩 と仕掛け、玉のコビンがあいた所へ角の王手を入れます。
これが筋の良い手で、後手は受けが難しくなっています。
上図以下、△5一玉 ▲3四歩 △4二銀 ▲4四角(下図)
角をバックに守備の銀を責め、8八に眠っていた角まで働かせて迫力のある攻めを実現しました。
上図以下、△3一銀 ▲3三銀(下図)
後手は金を受けて銀を引きましたが、薄くなった3三の地点に銀を打ち込んで完了です。
上図以下、△3三同桂 ▲同歩成 △同金 ▲同角成(下図)
と進み、このまま後手玉は詰んでいます。
以下、一例です。
上図以下、△4二銀打 ▲4三桂 △4一玉 ▲3一桂成 △同銀(下図)
と進み、あと3手で詰みますね。
上図以下、▲3二銀 △同銀 ▲4二金(下図)
まで先手の勝ちです。
取った角を最大限に働かせた見事な手順でした。
やっぱりAperyはさすがですね。
凡人の寄せ方
局面を戻します。上図は、後手が△2三歩 と受けの形を作った所です。
先ほど、ここから▲3五歩 と突き捨ててから▲1六角 と玉を睨む角を打つAperyの見事なお手本を見てもらいました。
本来ならここで終わるのがいいんですが、おまけとして凡人の私が指した寄せも書いておくので、お時間がある方は見ていってください。
上図以下、▲4六銀(下図)
取った銀でもう一度攻めを狙う筋の悪い一手です。
先ほどの▲3五歩 の素晴らしさが分かる悪い例として反面教師にしてください。
上図以下、△7四歩 ▲3五歩 △同歩 ▲同銀(下図)
狙いは先ほどの▲1六角 でも出てきた▲3四歩 を含みにした手です。
上図以下、△3六歩 ▲3四歩 △3七歩成 ▲同桂 △4二銀(下図)
似て非なる遅さですね・・・
Aperyが指した▲1六角 の強烈さがよく分かると思います。
上図以下、▲4四角 △1二金 ▲2二歩(下図)
▲2二歩 では▲1六角 と打てば良い感じの寄せになっていたみたいです。
▲2二歩 は大差なので確実にいこうとしたヌルイ一手ですね。
上図以下、△4三銀 ▲8八角 △6四歩 ▲2一歩成(下図)
△6四歩 と玉の退路を作られて鈍足感がハンパないです。
上図以下、△5四銀 ▲2二と △6五歩 ▲1二と(下図)
金を取って飛車成りが確実になりました。
上図以下、△6六歩 ▲同角 △1二香 ▲2三飛成 △3六歩(下図)
△3六歩 ではなく△6三玉 と逃げられていたら長引いたんですが、そうしなかったのでここで詰みがあります。
最後に実戦詰将棋として出題するので解いてみてください。
答えは数行下の次の見出しで書きます。
実戦詰将棋の答え
上図以下、▲4一角(下図)から詰みます。
6三の地点に逃がさない角がポイントですね。
△5一玉 と逃げると持ち駒がなく合駒できないので▲3三角成 からアッサリ詰みます。
なので角を取るんですが・・・
上図以下、△4一同玉 ▲3二竜(下図)
この竜捨てが気持ちいい豪快な一手ですね。
上図以下、△3二同玉 ▲3三歩成 △4一玉 ▲4二金(下図)
までの7手詰みでした。
まぁ実戦ではこの詰み手順に気付かず▲3二竜 の所で▲4四桂(下図)と縛ったんですけどね・・・
下段に落として縛れば勝ちとしか思ってなかったんで竜を捨てる手が見えませんでした・・・
こういう手がパッと見えないのが私の弱さですね。
最後に
初心者向けに「空 だめ子」の攻略手順を説明しながら紹介してみました。攻略のポイントとしては
・角道を開けずに飛車先を突く
・角頭を受けなかったらシンプルな攻めで角を取る
・角を取ったあとは焦らず攻めの形を作る
という感じですね。
まずは余計な変化を生まないために角道を開けずに飛車先の歩を伸ばし・・・(下図)
角頭を受けなかったらそのまま歩を打って角を取れば勝勢です。(下図)
ただ、シンプルに角を取る手順だと金銀の連結がしっかりしてるので二の矢としてゆっくり攻めの形を作る必要があります。
シンプルに銀を進出して、慌てずに角を参加させる「飛車・角・銀」の3枚の攻めの形を作ってください。(下図)
「攻めは・飛車・角・銀・桂」
とは言うものの、実戦では「飛車・角・銀」の3枚を中心に攻めの形を作ることが多いですね。
「桂馬まで加わったら最高」
という理想形をイメージしながら、まずはこの3枚の攻めの形を目指してください。
この基本さえ抑えておけばそう簡単に攻めが切れることはないので、だめ子相手なら盤石な体制を築いて勝ち切れると思います。
だめ子のスキをトガめる感覚を身につけて、しっかり勝ち越せるように頑張ってください。
10回やって7勝できれば脱・初心者と胸を張っていいと思いますよ。