脱・初心者を目指すための
5級を越える将棋講座
第18回は
基本となる手筋「銀」編
の3回目として
・下段に落とす銀
・桂頭の銀
を紹介します。
銀ならではのナナメの利きを活用した
・キッチリ決める攻め
・しぶとく粘る受け
を学び、初心者とは一味違う「終盤の考え方」を掴むキッカケにしてください。
下段に落とす銀
「銀の王手で玉を下段に落とす使い方」(下図)は第1回の「金と銀の1~3手詰め」でも触れましたが、今回はもう少し実戦的な手順を紹介します。
銀を使った寄せのパターンとして覚えれば終盤が楽しくなると思いますよ。
飛車成りを狙う「下段に落とす銀」
上図は、後手が2一にいた桂を△3三桂 と跳ねたことで「下段に落とす銀」から始まる寄せが生じた局面です。
2八の飛車を最大限に働かせるための銀打ちがポイントになります。
上図以下、▲2一銀(下図)
桂がいなくなった所に打つ▲2一銀 がその一手です。
4一には馬が利いていて逃げられないので「取る」か「狭い所に逃げるか」しかないんですが・・・
△3一玉 は▲3二金 の詰み・・・
△2一同玉(下図)と取るのは・・・
狙い通り「玉を下段に落とす」ことに成功したので・・・
上図以下、▲2三飛成(下図)
玉の利きが消えた2三に飛車を成り込めば「一間竜」の詰み形に持ち込めます。
逃げると頭金の詰みなので・・・
上図以下、△2二金 ▲3二金(下図)
2二に合駒するしかありませんが、▲3二金 と打てば「玉」でも「金」でも取れないので逃げるしかなく・・・
上図以下、△1一玉 ▲2二金(下図)
までの詰みになります。
なので最善の逃げ方は銀を取らない△2二玉(下図)です。
これなら詰みませんが・・・
上図以下、▲3二金 △1一玉 ▲2三飛成(下図)
▲3二金 で玉を隅に追いやり、▲2三飛成 と竜を作れば受けがなく先手の勝ちです。
初手の▲2一銀(下図)は初心者の頃は見えない一手だと思います。
こういう「銀を捨てて迫る手」がパッと見えれば5級には到達していますよ。
玉を引き付けて王手を続ける「下段に落とす銀」
上図は、▲8二竜 への受けを疎かにした局面です。
4二にいるのが「金」なら耐久性があったんですが、「角」なので「下段に落とす銀」から詰ますことができます。
上図以下、▲4一銀(下図)
この銀打ちが「玉」を下段に落として「金」の射程圏内に入れる一手です。
△4一同玉(下図)と素直に取ると・・・
上図以下、▲5二金(下図)
脇の甘い角のスキを突いた▲5二金 の王手から詰みます。
よく見ると1四に先手の歩がいて上部への逃げ道がないので・・・
上図以下、△3二玉 ▲4二金 △2一玉 ▲3二金(下図)
金でズンズン押していけば・・・
上図以下、△1二玉 ▲2二金(下図)
までの詰みです。
なので▲4一銀 は取らずに△2一玉(下図)と逃げるのが最善ですが・・・
上図以下、▲3二金 △1二玉 ▲2二金(下図)
▲3二金 ~ ▲2二金 と銀を取れば・・・
上図以下、△2二同玉 ▲4二竜(下図)
一気に守りの駒を剥がして詰みに持っていけます。
上図以下、△2一玉 ▲3二竜(下図)
4一の銀の利きのおかげで簡単な詰みですね。
指されてみれば簡単ですが、銀を捨てる発想がなければ気付けない詰み筋だと思います。
横に進めない「角」や「銀」が玉を守っている場合、
「銀」を犠牲に「金」の王手が掛かる形にする
というのは効果的です。
銀捨てから始まる寄せパターンとして頭に入れておくと役立ちますよ。
馬と連携した「下段に落とす銀」
「下段に落とす銀」の最後は「馬」と連携した攻め筋を紹介します。上図は▲6四角成 の王手を△5三金 と受けた局面です。
ここで馬を逃げると後手に手番が回って混戦模様になったりするんですが、「下段に落とす銀」を活用すれば攻めを続けることができます。
上図以下、▲5一銀(下図)
取れば「頭金」を狙える所に誘う▲5一銀 が好手です。
まずは素直に取った△5一同玉(下図)から解説します。
上図以下、▲5三馬 △4二金(下図)
これには▲5三馬 と金を取って▲5二金 の一手詰めを見せれば寄りです。
上図の△4二金 が最善の頑張りですが・・・
上図以下、▲5二金 △同金 ▲6三桂(下図)
▲5二金 で金を5二に誘ってから▲6三桂 と打つのが
「桂」と「馬」の連携した詰み形
に持ち込む好手順です。
以下、△6三同金 なら▲5二金 の詰み・・・
△4一玉 なら▲3一金(下図)の詰み・・・
△6一玉 なら▲7一馬(下図)の詰みです。
キレイに「桂」と「馬」が連携した詰みですね。
▲5一銀 を取ると寄り筋なので△3二玉(下図)と逃げる手も考えられますが・・・
上図以下、▲5三馬(下図)
こちらも▲5三馬 と金を取れば、▲4二馬 △2二玉 ▲3二金・・・の詰めろなので手番を握って攻められます。
ここで
① △1四歩
② △2四歩
③ △2五桂
と逃げ道を開ける手や
④ △2一金
⑤ △4一銀
と駒を足して受ける手などが考えられますが、どれも寄せ切れます。
① △1四歩(下図)と突いて1三からの脱出を狙った場合・・・
上図以下、▲4四桂(下図)
「歩頭の桂捨て」の手筋から詰みます。
△2二玉 と逃げると▲3一馬(取れば▲3二金)から詰むので・・・
上図以下、△4四同歩 ▲4三金 △2二玉 ▲3一馬(下図)
桂を取るしかありませんが、▲4三金 ~ ▲3一馬 と迫れば「頭金」を含みにした手順で詰みです。
以下、△3一同玉 は▲3二金打 ですし・・・
△1二玉 は▲1三金 までの詰みです。
② △2四歩(下図)と2三からの脱出をしようとしても・・・
上図以下、▲1五桂(下図)
シンプルに▲1五桂 で2三の逃げ道をふさげば▲2三金 や▲4二馬 からの詰みを防げず寄り筋です。
③ △2五桂(下図)と跳ねて3三から逃げようとした場合は・・・
上図以下、▲4二馬(下図)
▲4二馬 で3三への逃げを許さなければ、以下、△2二玉 ▲3二金 からの簡単な詰みです。
④ △2一金(下図)と3筋を補強した場合は・・・
上図以下、▲3一金(下図)
金の利きに打つ▲3一金 が好手で寄せ切れます。
△3一同金 なら▲4四桂(下図)から・・・
上図以下、△4四同歩 ▲4三金 △2二玉 ▲3一馬(下図)
と迫ればおなじみの手順で詰みなので、▲3一金 は取らずに△2二玉(下図)と逃げます。
これなら詰みませんが・・・
上図以下、▲2一金 △同玉 ▲3二金(下図)
取った金を▲3二金 と捨てて玉を引き付け・・・
上図以下、△3二同玉 ▲4二馬 △2二玉 ▲3二金(下図)
王手を掛けながら玉を隅に追いやれば・・・
上図以下、△1二玉 ▲3一馬(下図)
定番の必死の形で寄りです。
「金を渡すと危ない」と判断し、あえて金を使わず⑤ △4一銀(下図)と4二の地点を受けた場合は・・・
上図以下、▲4四桂 △同歩 ▲4三金 △2二玉 ▲3二金打(下図)
またも▲4四桂 から迫ります。
▲3二金打 に△1二玉 と逃げるのは▲3一馬 と入れば必死形なので・・・
上図以下、△3二同銀 ▲3一馬(下図)
△3二同銀 と取るしかありません。
それでも▲3一馬 と迫るのが好手です。
△1二玉 と逃げると▲3二金 の必死なので・・・
上図以下、△3一同玉 ▲4二銀成(下図)
△3一同玉 と馬を取りますが、▲4二銀成 から王手が続く形になったため・・・
上図以下、△2二玉 ▲3二成銀 △1二玉 ▲2一銀(下図)
までの詰みがあり、どう対処しても「必死」か「詰み」になってしまい、後手は成す術がありません。
ここまで読み切るのは有段者クラスなので難しいですが、なんとなくでいいので銀で下段に落として迫る感覚を掴んでください。
△5三金(下図)と馬に当てて受けられた時・・・
「馬を逃げずに迫る手はないか」
と考えるだけでも大きな成長に繋がりますよ。
「桂頭の銀」とは・・・
ここまでの講座では「攻めの手筋」を中心に紹介してきましたが、「これは簡単だし知っておいて損はないかな?」
と思った受けの手筋「桂頭の銀」を紹介して終わります。
「桂頭の銀」というのは
相手の「桂」の上に「銀」を打つ一手
のことです。(下図)
「桂」の利きに「銀のナナメの利き」がピッタリ重なる利点を活かした受けの一手ですね。
ヤッカイな桂打ちには「銀」で対抗するのが有効になります。
実例を元にその効果を紹介します。
「舟囲い」への「控えの桂」を受ける「桂頭の銀」
上図は、△8四桂 と「控えの桂」で舟囲いを狙われた所です。
次に△7六桂 の「角・金」両取りを食らうと大損なので受けなければいけません。
でも△7七玉 だと▲8九竜 と桂を取られ・・・
△7七金 だと▲6九銀(下図)の割り打ちがあるので受けにくいです。
こういう時、持ち駒に銀があるなら「桂頭の銀」で受けると粘りが利きます。
それが▲8五銀(下図)と桂の上に打つ一手です。
囲いを崩すことなく△7六桂 を受けられるのが大きいですね。
上図以下、△7三桂(下図)
銀をどかそうと△7三桂 と跳ねるのが定番の一手ですが・・・
上図以下、▲8四銀(下図)
駒損でも「急所の桂」を取ってしまえば1回 落ち着いた局面に持っていけます。
以下、△8四同歩 ▲3九歩 と受けるのが一例です。
無理に△7六桂 を受けようとして致命傷を負うよりはマシな局面になり、もうひと頑張りできる形になりました。
「控えの桂」のような厳しい手を最小限に食い止める時に「桂頭の銀」は有効です。
こうやって「簡単に崩れない」のが逆転のチャンスを掴む要因になるので、しっかり受ける形として記憶しておいてください。
「美濃囲い」への「控えの桂」を受ける「桂頭の銀」
もう1つ、定番の形も紹介します。上図は「美濃囲い」に△2四桂 と「控えの桂」を打たれた局面です。
あっさり△3六桂 の「王手金取り」を食らうと厳しいので受けなければいけません。
でも▲4七金 だと△5八銀 から絡まれますし・・・
▲4七銀 だと6九の馬の利きを活かして△3六桂 と跳ねられ、▲同銀 △同馬(下図)となると囲いが薄くなった上に駒損になって痛いです。
なので、ここでも持ち駒の銀を投入して▲2五銀(下図)と受ける「桂頭の銀」が有効になります。
先ほどのように△3六桂 はありますが、▲同銀 △同馬(下図)となった時に囲いが薄くなってないだけマシですから。
2五の銀を狙って△3三桂(下図)とされても・・・
上図以下、▲2四銀(下図)
▲2四銀 と「急所の桂」を取れば、対処の難しかった「控えの桂」が消え、さっきよりは頑張れる形になります。
以下、△2四同歩 ▲4七銀 が一例ですが、王手金取りを食らうよりはマシですよね。
舟囲いの時と同じように「簡単に崩れない」のが逆転のチャンスを掴む要因になります。
押されている時は
「囲いを崩さずしぶとく耐える」
辛抱の手順が大切なので、「桂頭の銀」のように急所の駒を的確に対処する指し方を覚えると負けにくくなりますよ。
最後に
基本となる手筋「銀」編の3回目として
・下段に落とす銀
・桂頭の銀
を紹介しました。
・飛車成りを狙う銀捨て(下図)
・玉を「金の射程」に入れる銀捨て(下図)
・「馬」を逃げずに迫る銀捨て(下図)
・しぶとく耐える銀打ち(下図)
などは、終盤の急所になる銀の使い方なのでしっかり覚えてください。
類似形で浮かぶようになれば5級越えは果たしていますよ。
※「5級を越える将棋講座 第19回」は下記リンクからどうぞ。
【5級を越える将棋講座 ⑲】角の手筋「両取りの角」を解説【王手飛車取り】 - ダメ人間ブログ【ニートの愚痴と将棋の記録】