今回は、現代の相掛かりの基本を学べる本
「相掛かりの新常識」
のレビューをしたいと思います。
この本は、ここ数年見かけるようになった
「飛車先の歩交換を保留する相掛かり」
について解説されている本です。
従来の相掛かり定跡で知識が止まっている人は最近の相掛かりを見て
「なんで飛車先の歩交換を保留するの?」
「飛車先の歩交換3つの得ありとか言わなかったっけ?」
「まずは先手が一歩持ってからスタートが相掛かりでしょ?」
といった疑問があるんじゃないでしょうか。
そういった方はこの本で
「飛車先の歩交換を保留する理由」
を知るとまた違った感じで相掛かりを見れるようになると思いますよ。
全体的にサラッと基本を学べる内容になっているので、現代の相掛かりを改めて勉強したい方の1冊目にオススメですね。
この記事では一通り読んだ私が収穫のあった部分を中心に感想を書いていくので、購入を迷っている方の参考になれば嬉しいです。
第1章は「従来の相掛かり」のおさらい(飛車を深く引く▲2八飛 を中心に解説)
まずは「従来の相掛かり」についてサラッとおさらいから始まります。上図はお互いに飛車先を伸ばし角頭を金で受けた相掛かりの基本図です。
ここから▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩(下図)
と先手が飛車先の歩交換をして
・▲2六飛 と浮いて構えるか
・▲2八飛 と深く引くか
が1つの分岐点ですが、本書では深く引く▲2八飛 について解説されています。
ここで解説される
「飛車先の歩を交換する」とはどういう意味の手なのか
を知ることで
「現代の相掛かりで飛車先の歩交換を保留する理由」
がなんとなく分かります。
「あ~そうか・・・一歩持つメリットだけじゃないのか・・・」
というのが分かると現代の感覚が1つ身に付きますね。
・▲2六飛 と▲2八飛 の違い
・9筋と1筋の端歩の意味
なんかも何となく分かるので相掛かりの基本をまずはサラッと頭に入れるのに最適です。
これらの基本を踏まえた上で本題となる
「飛車先の歩交換を保留する相掛かり」
に進むことで相掛かりの流れも何となく分かりとっつきやすい内容になっていますね。
第2章から「飛車先の歩交換を保留する相掛かり」の解説
第2章からは現代の「飛車先の歩交換を保留する相掛かり」の解説になります。上図のようにお互い角頭を受けた後、いつ一歩交換にいくかの駆け引きが面白くもあり難しい所です。
上図以下、▲3八銀 △7二銀(下図)
となるのがよく見る局面ですよね。
この本では、ここから
・▲9六歩
・▲5八玉
・▲6八玉
と待機した場合の基本的な手順を学ぶことができます。
これらの形の
・特徴
・駒組み
・攻め方
・受け方
の知識がコレといってないなら有益な情報になると思いますよ。
本当に基本的な手順をサラッと解説している感じなので、
相掛かりの入門書
という感じで捉えておくのがいいと思います。
より深く学ぶなら、もう少し定跡が整備された頃に出る本を待つか、AIを使った自分なりの研究が必要になりますね。
棒銀の受け方が分かる
個人的にこの本を読んで良かったポイントは「シンプルに棒銀で来られた時の受け方が分かるようになった」
という所です。
相掛かりに限らず相居飛車の将棋で下図のように棒銀に来られた時・・・
受け方が分からずあっという間に銀で角頭を攻略されたことってありませんか?
私はしょっちゅうやられてましたよ・・・
昔からシンプルな棒銀の受け方がイマイチ分かってなかったんですよね・・・
でも、この本ではこのシンプルな棒銀への受け方をしっかり解説してくれます。
基本中の基本ではあるんでしょうけど自力では浮かばない発想だったのもあり、これを知れただけでもこの本を買った意味がありましたね。
「20年前にこの知識があればI君の棒銀も軽やかに受けられたのに・・・」
「あそこまで大差で負け越すこともなかったかもしれないなぁ・・・」
とちょっと悔やまれます。
単純な棒銀で攻められた時に意外とやられがちな人はこの本で棒銀の受け方を学ぶとまた違った将棋になると思いますよ。
▲5八玉戦法の超急戦の変化を知れる
この本で初めて知ったんですが、相居飛車には「▲5八玉戦法」
という指し方があるみたいです。
居飛車党同士なら下図のように横歩取り模様に進むことは多々あると思いますが・・・
ここからお互いに飛車先の歩交換をした所で▲3四飛 と横歩を取らずに▲5八玉(下図)と上がる手があるんだそうです。
横歩取りじゃなく相掛かりにこだわる指し方みたいですね。
ただ、この手を見た時に次のような手が気になりませんか?
上図以下、△8八角成 ▲同銀 △3三角(下図)
この飛車取りと角切りの両狙いは相居飛車なら常に警戒しなければいけない変化ですよね。
▲5八玉 と上がっているので▲2八飛 と引いても角切りが受からず普通に進めると先手がまずそうですが、ここから先手にも受けの手があって大丈夫というのが面白い所です。
「▲5八玉戦法」を指すなら知っておかなければいけない変化なので、もしこの戦法に興味があるならこの本で学ぶといいですね。
最後に
「現代の飛車先の歩交換を保留する相掛かり」について学びたいなら
「相掛かりの新常識」
は候補になる一冊です。
そこまで深くは触れず、序盤の基礎を広く浅く紹介している感じなので基本を抑えておきたい人向けの本だと思います。
・飛車先の歩交換を保留する意味
・端歩の意味
・棒銀の受け方
について基本からサラッと学びたい方にはオススメですね。
現代の感覚に少し触れることでプロ将棋の相掛かりを見る目がちょっと変わって面白くなると思いますよ。
相掛かりで何気なく見ていた「端歩」や「飛車の位置」の意味を少しでも理解したいならぜひ読んでみてください。