今回は、角換わりの基本を学ぶのに最適な本
「角換わり 初段の常識」
のレビューをしたいと思います。
この本は
「角換わりを指すなら知っておきたい基本的な定跡」
がキレイにまとまった本です。
本書を読めば
・棒銀
・早繰り銀
・腰掛け銀
・右玉
といった角換わりを代表する形の基本手順が一通り学べるので、将棋の基礎がだいたい身に付いてきた「アマ初段」を基準に
「初段の常識」
というタイトルを付けたのがしっくりくる内容でした。
「基本から角換わりを学びたい級位者の一冊目としてオススメ」
なのはもちろんのこと、初段 ~ 三段くらいの人にとっても
「ちょっと定跡を忘れた時のお供」
として本棚に置いておきたい一冊です。
この記事では
・大まかな内容
・収穫のあった部分
に触れながら感想を書いていくので、購入を迷っている方の参考になれば嬉しいです。
駒組みの基本からしっかり解説
まずは序盤の基礎として、角換わりならではの「駒組みの注意点」からしっかり解説されています。例えば下図のような最序盤や・・・
角交換をした後の下図など・・・
どちらも▲2四歩 と飛車先の歩交換にいけそうですが、もしそう指したらどうなるか・・・
といった所から始まります。
「飛車先の歩交換は得な場合が多い」
という知識はあるけど
「場合によっては不利になる」
というのを理解し切れていない級位者に優しい設計ですね。
この基本を覚えた後、それぞれ分岐して
・棒銀
・早繰り銀
・同型腰掛け銀
・右玉
・最新の角換わり
へと進んでいきます。
「棒銀」で必須になる知識が学べる
第1章は「棒銀」について「ちょっとした形の違いによる注意点」
に触れながら基本手順を学べます。
棒銀を指すなら必須となる△1四歩(下図)と突かれて▲1五銀 を防がれた形での攻め筋・・・
▲1五銀(下図)と出た形での攻め筋・・・
について「後手の反撃」や「先手の狙い」について分かりやすくまとまっているので、棒銀の基礎がしっかり身に付きますよ。
攻め方が分かると受け方も分かるのもあり、この手順は
「棒銀をやられた時に簡単に潰されがちな人」
の方が知っておくと役立つ知識かもしれません。
一手のミスが命取りな棒銀でも
「正しく指せば互角に持ち込める」
というのを知り、簡単に負けない将棋になれば初段になった感じがしますしね。
ここで得た知識から
「棒銀をやられても大丈夫」
と思えれば脱・級位者も近いかもしれません。
「早繰り銀」の細かい注意点が分かる
「棒銀」を覚えた後は、もうちょっと攻め筋が幅広い「早繰り銀」(下図)に進みます。狙いはシンプルで▲4六銀 ~ ▲3五歩(下図)の攻めですが・・・
後手にもしっかり対処手段があって簡単ではありません。
早繰り銀は攻め方と受け方をちゃんと知ってるかで大きく差が出るのもあり、
・先手が攻めを続ける「あの一手」
・後手の「あの手筋」を使った反撃
・▲2四歩 を△同歩 と取るか△同銀 と取るか
など、必要な知識をしっかり学んでおかないと簡単に形勢を損ねてしまいます。
本書ではその点についてしっかり触れているので、ちゃんと理解すれば安定した早繰り銀を指せるようになると思いますよ。
この章で個人的に面白かったのは
・早繰り銀にいく前のちょっとした駆け引き
・67ページの意外な一手
の2つでした。
特に67ページの手は一瞬たりとも浮かばなかったので、これを知れただけでも本書を読んだ価値がありましたね。
「相腰掛け銀」の基礎や「富岡流」の手順が学べる
第3章では、角換わりの中でも特によく見かける戦法「腰掛け銀」(下図)
について
・駒組みの基礎知識
・昔の仕掛け方
・最新の「富岡流」
・後手の工夫
などが学べます。
「先後同型に向かうまでの油断ならない応酬」や「可能性を秘めた昔ながらの仕掛け」は見ごたえがありました。
ちょっと変な手を指すとガツンと「致命的な角打ち」を食らう怖さは角換わりならではですね。
この章の見所は「同型腰掛け銀は先手の勝ち」と決定させつつある
「富岡流」
の手順とその理由を知れる所でしょうか・・・
詰みに至るまでの変化に軽く触れながらスッキリまとまっていて理解しやすかったです。
この手順を踏まえて「富岡流」を避ける後手の工夫も解説されているので基礎知識としては充分な内容でした。
ここまで読めば
最近はなぜ同型腰掛け銀が指されなくなったのか
が分かり、定跡の裏側を知った上で▲4八金・▲2九飛型の角換わりにいけるため、
ちゃんと基礎知識がある初段
に近づけると思います。
「右玉」への対策を学べる
個人的に一番収穫があったのが第4章の「右玉」(下図)です。「右玉」は後手ならではの利点を活かして「千日手」も視野に入れた受けの作戦で、やられた時に
・攻めの糸口を掴みにくい
・スキを作らない駒組みが難しい
・打開して攻めたら無理筋で負ける
など、どうにも指しずらくてずっと困っていましたが・・・
本書で「有力な2つの作戦」を知ることができてちょっと視界が開けたからです。
基本的な作戦ではあるんですが、改めて優勢になる流れを学べたのは本当に参考になりました。
右玉の弱点を突く攻め
を知るだけでも本書を読む価値があると思います。
最新の角換わり
第1章 ~ 第4章までで基本定跡を抑えたら、第5章で「最新の角換わり」に進みます。ここでは従来の駒組みをトガめる▲4五桂急戦(下図)と・・・
最近ではメジャーになった▲4八金・▲2九飛型(下図)
の基本的な攻め筋について軽く触れている感じですね。
もう少し進んだ「▲4五桂急戦」を学ぶなら
「神速!角換わり▲2五歩型」
がオススメで・・・
「▲4八金・▲2九飛型」を学ぶなら
「角換わりの新常識 ▲4八金・2九飛型 徹底ガイド」
がオススメです。
本書で基礎を覚えた後、最新形の基礎を学びたくなったら上記2冊も候補に入れて検討してみてください。
参考として過去に書いたレビューをどうぞ。
最後に
「角換わり 初段の常識」は、角換わりの基本定跡を学ぶなら
決定版
と呼べるほど必要な情報がギュッと詰まった一冊なので
「角換わりの基礎固めをしたい」
「最新の角換わりに進む前に従来の定跡を抑えておきたい」
「定跡を忘れた時に読み返す丁度いい本が欲しい」
といった方にオススメです。
これ一冊を理解すれば「角換わり」ならではの指し手が身に付き、
「筋の良い攻め」や「簡単に負けない受け」
ができる初段らしい将棋に近づくと思いますよ。
角換わりの定跡に触れたくなった方は本書から手に取ってみてください。
基礎を固めてしっかりした土台を築けば最新形の理解も早まると思いますよ。