今回は、振り飛車党なら読まない選択はない一冊
「久保利明 さばきの一手」
のレビューをしたいと思います。
・本書の内容
・ちょっとした次の一手問題
・本書を読んだ感想
を書きながらどんな感じの本か紹介するので、購入を迷ってる方の参考になれば嬉しいです。
「久保利明 さばきの一手」の内容
この本は「さばきのアーティスト」
久保利明 先生
の実戦譜から
「さばき」
に重点を置いた「次の一手」が108問も収録された本です。
久保先生ならではの「芸術的なさばきの一手」が目白押しなので
「さばきの感覚を身につけたい」
「久保先生のような振り飛車を目標にしている」
「もっと筋のいい振り飛車を指したい」
といった振り飛車党の方にオススメの本ですね。
本書の問題を何度も解き、答えを暗記するくらい読み込めば
・さばける局面に気づく嗅覚
・振り飛車ならではの指し回し
・駒を最大限に働かせるコツ
など、振り飛車を指す上で必要な「さばき」の感覚が磨かれて指し方や手の見え方が変わってくると思いますよ。
「さばき」を意識した次の一手の例題
「さばきに重点を置いた次の一手ってどんな感じ?」という疑問を持った方もいるかもしれないので、私の実戦を元にAIで検討して見つかった「さばき」の一手を例題として出題します。
本書を読む前のウォーミングアップのつもりでお楽しみください。
第1問 大駒を最大限に働かせる

上図は、きのあ将棋の「郷谷さん(上級-)」との一局で現れた局面です。
先手の四間飛車に対し、後手が矢倉で迎え撃つという変わった将棋になりました。
現在▲4四歩 を△同銀 と取った所なんですが、ここで先手の大駒を最大限に働かせて攻める手順があります。
振り飛車らしく豪快に攻めるにはどう指せばいいでしょうか。
答えは数行下の見出しで書きます。
第1問の答え

では答えです。
上図以下、▲6四飛 △同歩 ▲7一角(下図)
▲6四飛 が「ちょっと働きの悪い飛車」と「働きのいい角」を交換して駒の効率を逆転する一手でした。
すかさず▲7一角 と打ち込んだ局面は「飛車取り」と「▲4四角引成 の2枚替え」の狙いを受けるのが難しく、主導権を握った先手ペースです。
上図以下、△2五銀 ▲同歩 △4二飛(下図)
後手は△2五銀 と上部を縛っている桂馬を取ってから△4二飛 と受けてきましたが・・・
上図以下、▲4四角引成 △同金 ▲5三銀(下図)
角切りから▲5三銀 と両取りに打ち込めば後手は崩壊寸前です。
上図以下、△5五桂 ▲4二銀成 △同金 ▲8二飛 △4一歩(下図)
△5五桂 と角筋を止め、▲8二飛 の金取りも△4一歩 と受けた所で第2問です。
第2問 大駒を働かせる寄せ

ここで後手玉を睨んだ角と飛車の利きを活かして攻めを続ける一手があります。
邪魔な4四の金が4筋からズレてくれるといいんですが・・・
どう指せば寄せを狙えるでしょうか。
答えは次の見出しで書きます。
第2問の答え

では答えです。
上図以下、▲5五銀(下図)
思い切って桂馬を取る▲5五銀 が4四の金に働きかけながら手を繋ぐ好手になります。
△5五同金 と金で取ってきたら▲4三歩 △3二金 ▲4四桂(下図)が一例で攻めが続きます。
厳密に言えば△3二金 ではなく△4四飛 と受けられると難しく長い道のりになるんですが、評価値的には先手が3000点いいみたいなので細かい変化はご容赦ください。
△5五同金 がダメなら△5五同歩(下図)と取るくらいですが・・・
上図以下、▲5六桂(下図)
▲5六桂 という角筋を活かした強烈な一手があって攻めが続きます。
取るに取れない「さばき」を象徴するようなこの一手を問題にした方がよかった感がありますね。
上図以下、△4三金引 ▲5五角 △3三銀 ▲4四歩(下図)
さっきまで5五が渋滞していて力を発揮できなかった角が活躍して良い感じになっています。
上図以下、△5三金寄 ▲4三銀(下図)
△4四同銀(金)は▲同桂 が厳しいので△5三金寄 とかわしますが、▲4三銀 が入れば先手ペースですね。
ここまでくれば「さばいた」と言ってもいいと思います。
参考になる「さばき」の手筋が満載
例題は手が見えやすい局面だったと思いますが、本書はもっと読み応えのある問題になっているので安心してください。先ほどのように大駒を切るあからさまな手と違い、深い読みが隠れたプロならではの捌きがメインですから。
パッと見では押されてるように見えたのに、数手後には見違えたように駒が活き活きする捌きっぷりが見事で
「この局面で押さえ込まれずに反撃する手があったなんて・・・」
「たった3手で窮屈だった左辺の駒が働き出した・・・」
「手の繋ぎ方が上手すぎる・・・」
「こういう振り飛車が指したかったんだよ!」
と感動しまくりでしたね。
「角」「銀」「桂」「歩」
の上手い使い方が色々学べて成長できた気がします。
特に左桂をさばく発想は参考になりました。
第1感でこういう手が浮かぶようになったら楽しくなりそうですね。
それにしても、振り飛車の魅力たっぷりの手順が詰まった108問が全部プロの実戦の中で指した一手っていうんだからすごすぎます。
プロ相手にここまで捌いてたら
「さばきのアーティスト」
って呼ばれるのも納得ですよ。
久保先生には遠く及ばないけれど、「きのあ将棋」や「ぴよ将棋」相手に20局に1回くらいは
「キレイにさばけた!」
と思えるような将棋を指せるようになりたいもんです。
最後に
振り飛車ならではの「さばき」を学びたいなら「久保利明 さばきの一手」
はメチャクチャオススメの本です。
棋譜並べをするよりポイントが分かりやすく、「さばき」の感覚を掴みやすいですから。
将棋では「手が浮かぶか」というのも大事な要素なので、感覚を鍛えてボンヤリとでも捌く手が見えるようになれば楽しくなると思いますよ。
久保先生のような
「軽快なさばき」
に憧れがあるなら、本書の108問を通して「さばきのコツ」に触れてみてはいかがでしょうか。