今回は「きのあ将棋」の
テスト版「相さゆり」さん
に「棒銀」で挑み、どうにか勝てた一局を紹介します。
見所は
・嬉野流に棒銀はイマイチだと思った受けの一手
・反面教師にしてほしい筋悪な攻め方
の2つです。
変則的な将棋に四苦八苦する自称二段の頑張りをお楽しみください。
嬉野流って初見は舐めプっぽいよね
先手が「私」、後手が「相さゆり」です。初手から、▲7六歩 △4二銀(下図)
いきなりの△4二銀・・・
Youtubeの将棋チャンネルとかで見たことはあるけど、実戦でやられたことがない「嬉野流」をやられました。
初見だったら
「将棋を覚えたてなんだな・・・」
と思ってしまうような一手ですよね。
こんな一手から始まる将棋が戦法として成立するなんて・・・
ホント、将棋ってヤツは奥が深ぇや・・・
上図以下、▲2六歩 △3一角(下図)
△3一角 は、中学生の頃に初めて鬼殺しをやられた時、△3三桂 と跳ねた手を見て
「お前、まじめにやれよ」
って言った時と同じ気持ちになる一手です。
数手後に地獄が待っているとも知らずにね・・・
でもこの進行は「嬉野流」という名前が浸透していなければ「穴角戦法」並みの舐めプとしか思えねぇ・・
高段の先生とかにやったら、勝っても負けても怒られそう・・・
もし△4二銀 ~ △3一角 が活かせずにボロ負けしたら
「初手からふざけてんじゃねぇ」
ってメッチャ怒られる気がする・・・
ある意味、覚悟を決めた将棋かもしれません。
上図以下、▲2五歩 △3二金(下図)
2筋の受けを疎かにしてる感じがあるので
「原始棒銀みたいなシンプルな攻めが受けにくくない?」
と思って▲2五歩 と伸ばしたくなりますよね。
初心者相手ならこのまま棒銀で攻め潰せそうな雰囲気が漂っていますし・・・
でも そう簡単にいかないのが嬉野流のヤッカイな所なんですよね・・・
原始棒銀が成立するならこんな手順が成立するわけないんですから・・・
ただ、棒銀がイマイチになる具体的な手順が分からなかったので、本局はやってみることにしました。
嬉野流に棒銀をやると・・・

上図以下、▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2二歩(下図)
この辺からは手の良し悪しがよく分かりませんが、△2二歩 は嫌な予感が漂いますね。
焦点がズラされて攻めにくそうです。
ちなみに、Aperyの推奨は▲2四歩 と一歩交換にいかず、▲3八銀 とシンプルに棒銀にいく手でした。
安易に相手の誘いに乗らない方がいいのかもしれません。
上図以下、▲2八飛 △5四歩(下図)
この辺から後手の狙いがちょっとずつ見えてきますね。
あんまりゆっくりしてると引き角が活きる反撃を食らいそうです。
上図以下、▲7八金 △5三銀 ▲3八銀 △8四歩(下図)
一手だけ▲7八金 と陣形を引き締め、▲3八銀 から棒銀を狙います。
上図以下、▲2七銀 △8五歩 ▲3六銀 △4四銀(下図)
△4四銀 が先手の攻めを牽制する意味もあるヤッカイな一手でした。
その意味はもう少し進んだ先に分かります。
上図以下、▲6九玉 △8六歩 ▲同歩 △同角(下図)
とりあえず▲6九玉 と先に角筋を避け・・・
上図以下、▲8七歩 △6四角 ▲5八金 △6二銀(下図)
無難に収めて先手にも攻めのターンが回ってきました。
上図でAperyの推奨は
・▲2五銀 と棒銀を狙う手
・▲6八銀 からもう少し囲う手
の攻めと受けの方針が分かれる2つでしたが、私はどっちつかずな手で形勢を損ねます。
上図以下、▲1六歩 △5三銀上 ▲1五歩(下図)
何となく すぐ棒銀にいくのが怖かったので、攻め筋を増やそうと端を伸ばしました。
これがヌルく、200くらい先手持ちだった評価値が0に戻っています。
上図以下、△9四歩 ▲2五銀(下図)
端も詰めたので▲2五銀 から攻めを狙いました。
ここから後手のミスで棒銀が成立しましたが、正しく受けられると難しかったようです。
受けの好手△3五銀

上図以下、△2三歩 ▲2四歩(下図)
「やってこい」
と言わんばかりの△2三歩 に手拍子で▲2四歩 と打ち、
「どうやって受けるのかな?」
と思っていたら、局後の検討で上手い一手が示されました。
実戦は違う手だったので棒銀が成立しましたが、もし△3五銀(下図)と受けられたら棒銀を捌くのが難しかったようです。
次に△2四歩 とされると▲同銀 に△2七歩 ~ △2六歩 ~ △2四銀 と銀を取られて困るので・・・
上図以下、▲2三歩成 △同金 ▲2四歩 △2二金(下図)
▲2三歩成 から攻めるしかありませんが、上図まで進むと先手の飛車先が重くて失敗した感がありますね。
上図以下、▲6八銀 △2六歩 ▲6六歩 △7四歩 ▲6七銀(下図)
ただ、上図のように進めれば評価値的には先手が200点くらい良いみたいです。
まだやれる形勢ではあるようなので、簡単に決まりそうだった棒銀が負担になった悔しさに耐え、気持ちを保つのが大切になりそうです。
受けミスで棒銀が成立した本譜の進行
局面を戻します。上図は、△2三歩 と攻めを誘ってきた手に▲2四歩 と合わせた所です。
ここで△3五銀 なら簡単にいかなかったんですが・・・
上図以下、△2四同歩 ▲同銀(下図)
本譜は△2四同歩 と取ってきたので▲同銀 で棒銀が成立し、先手持ちの展開になりました。
上図以下、△8六歩 ▲同歩 △9五歩 ▲2三銀成(下図)
これで銀と金の交換になればとりあえずOKですね。
上図以下、△4二金 ▲2二歩(下図)
さすがに交換はマズイと判断したのか△4二金 と避けました。
ここが攻めの分岐点で、正着は上図の▲2二歩 ではなく▲2二成銀 と入り、▲2三飛成 と飛車を成る余地も見せる手だったようです。
▲3二成銀 と捨て、▲2一飛成 と竜を作る手もあり、この辺は好みが出そうですね。
▲2二歩 は普通なら重くて筋悪なんですが、この形ではそこまで悪くない一手でした。
上図以下、△8六飛 ▲2一歩成 △7六飛 ▲3一と(下図)
後手の飛車が怖い位置にきたのを無視して「と金」で迫れば先手持ちの形勢です。
上図以下、△6二玉 ▲7七金(下図)
ここでちょっとヒヨってしまい、▲7七金 と受けたのが筋悪でした。
△3六飛 と逃げる手もあって、後手にとってそこまで嫌な手でもなかったみたいです。
上図以下、△7五飛 ▲3二と(下図)
そして▲3二と も筋が悪く、ここは▲3二成銀 と入って飛車成りを見せる方が厳しかったようです。
今回の将棋はいかに飛車成りを見せるかが重要だったようですね。
上図以下、△5二金寄 ▲3三成銀 △3六歩(下図)
後手から△3六歩 の反撃を受け、ここから怖い展開になっていきます。
危なげな終盤

上図以下、▲2一飛成 △8七歩 ▲同金 △3七歩成(下図)
飛車を成るなら後で▲4二と が厳しくなる▲2二飛成 が正着でした。
急所を見極める力の低さが見えますね。
△3七歩成 で先手陣に手がついてしまい、寄せが遅い私では危うい展開になっています。
上図以下、▲5六桂 △4七と(下図)
上図での正着は▲4七同金 と「と金」を取り、△1九角成 に▲4四桂 △同歩 ▲4三歩 と確実な「と金」攻めを狙う手順でしたが・・・
上図以下、▲6四桂 △5八と ▲同玉 △6四銀(下図)
▲6四桂 と角を取った手が悪く、△5八と から先手陣が薄くなって油断できない感じになっています。
上図以下、▲4二と △4六桂 ▲4八玉 △5八金(下図)
上図以下、▲3七玉 △3五飛 ▲3六歩 △3八桂成(下図)
ただ、△4六桂 から△3八桂成 までの手順は慌てた無理攻めだったので助かりました。
上図以下、▲3八同玉 △3六飛 ▲3七歩 △3三飛(下図)
成銀を取られたけど自玉が安全になったので冷静に指せば勝ち切れそうです。
上図以下、▲5二と △同玉 ▲4五歩(下図)
シンプルに飛車を狙う▲4五歩 で先手勝勢が確定しました。
上図以下、△5五銀左 ▲5六歩(下図)
ただ、▲5六歩 は甘く、ここは▲2四角 とダイレクトに飛車を狙えば寄り筋だったようです。
上図以下、△8六歩 ▲同金 △3六歩(下図)
ちょっと嫌な感じで手を付けられています。
上図以下、▲2二竜 △3二銀 ▲3六歩 △2一歩(下図)
寄せが見えなかったので後手の攻めを細くすることにしました。
△3二銀 と使わせたので楽になりましたね。
上図以下、▲3一竜 △5一金 ▲5五歩 △同歩 ▲5四桂(下図)
先手玉はまだ寄らないのでゆっくりした寄せを狙います。
上図以下、△3七歩 ▲同桂 △5三銀 ▲4二金(下図)
これで寄りそうです。
上図以下、△4二同銀 ▲同桂成 △同金 ▲6一銀(下図)
上図以下、△5三玉 ▲5一竜 △5二桂(下図)
ここで詰ましにいくか、ゆっくり包囲するか迷いましたが・・・
上図以下、▲5二同成銀 △6四玉 ▲5五角(下図)
いけると踏んで詰ましにいきました。
ここまでのグダりっぷりでけっこう弱気だったので、最後の最後で思い切れたのは良かったと思います。
上図以下、△5四玉 ▲4二成銀 △5三歩 ▲6五銀(下図)
これで詰みそうです。
上図以下、△6五同玉 ▲6六金 △7四玉 ▲4七角(下図)
▲4七角 は、もし読み抜けがあって詰まなかった時に▲5八角 と金を取っての受け切り勝ちも見た保険付きの王手です。
上図以下、△6五銀 ▲同角 △8四玉 ▲8一竜(下図)
ここまでくれば大丈夫ですね。
上図以下、△8二歩 ▲同竜 △9四玉 ▲8三竜(下図)
無事、後手玉が詰み、ここで「相さゆり」さんの投了となりました。
最後に
コレといった対策のない「嬉野流」に四苦八苦しながらどうにか勝った一局を紹介してみました。単純な棒銀は△3五銀(下図)の受けがあって難しい
というのが分かっただけでも収穫だったと思います。
もう少し良い感じに成立する攻め筋が欲しいですね。
簡単に突破できそうで難しい嬉野流は、これからも悩ませ続ける嫌いな戦法になりそうです。