昨日「きのあ将棋」の「千星さん」と遊んでいたら
7連敗して心を折られる
っていう事態に遭遇しました。(下図)
「これで勝てなかったら諦めよう」
と挑んだ8局目は194手という泥試合の末にどうにかこうにか勝利したんですが・・・
「袖飛車への対策がサッパリ浮かばん・・・」
「序盤でリードする形に1回もならないし・・・」
「自力ではキレイに勝つ手順が1ミリも浮かばない・・・」
といった感じの先の見えない将棋に疲れ切ってしまいましたよ。
このまま負けパターンだけが頭の中に残っていたら辛くて眠れません・・・
「もうやるだけやったしAIに答えを聞いてみるか・・・」
と初手から検討して改善案を探していたら
根本的な発想が違う大胆な一手
が示され、力戦に力戦で返す面白い構想が見つかりました。
今回は、負け将棋の愚痴を吐き出しながら
「もしかしたら千星さんへの対策として使えるかも・・・」
と思ったAIの一手を紹介します。
千星さんに苦戦してる方はちょっとお付き合いください。
あまりオススメできない棒銀
先手が「私」、後手が「千星さん」です。まずは負けまくったイマイチな手順を軽く紹介します。
初手から、▲7六歩 △7四歩 ▲2六歩 △7二飛(下図)
▲7六歩 スタートで▲2六歩 の居飛車を宣言するとここまでは確定事項です。
上図以下、▲2五歩 △3二金 ▲2四歩(下図)
変則相掛かりみたいな感じですね。
「7筋からの攻めは遅いんじゃないかなぁ・・・」
「シンプルに一歩交換から棒銀にいけば攻め切れるかも・・・」
と思ったので、超絶単純な原始棒銀を狙いました。
上図以下、△2四同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲2八飛(下図)
一歩交換をした後は後手も動いてきます。
上図以下、△7五歩(下図)
「7筋で歩を交換されても影響は小さそう」
と思っていたら・・・
上図以下、▲7五同歩 △同飛(下図)
この中途半端な位置にいる飛車がちょっと邪魔で、単純な棒銀の牽制になっていました。
上図以下、▲3八銀 △5二玉 ▲2七銀 △1四歩 ▲3六銀(下図)
銀を繰り出しても棒銀を簡単に捌かせない一手があります。
上図以下、△3四歩(下図)
この△3四歩 がヤッカイな一手で、角道を開けられると
・いつでも△8八角成 で角を処理できる
・7五の飛車の利きを活かして反撃する手もある
・△3三桂 と跳ねて銀を止める手がある
・△3五歩 で強引に銀を狙う手がある
など、複数の狙いが生まれて局面が複雑化するので急に棒銀が空振りそうな予感がしますね。
すぐに▲2五銀 と出ても角交換をされたりすると銀が目標になるので・・・
上図以下、▲6八玉(下図)
自陣の整備に入るのがAIの推奨手ですが、こうなると袖飛車ならではの7筋の攻めを狙える展開になって後手も悪くありません。
先手としては素早く攻めるために銀を繰り出したのに、その銀が負担になりそうで面白くない気がします。
評価値は+100を示しているのでどちらも悪くない将棋とはいえ、あえて飛び込む変化ではないのかもしれません。
7連敗した将棋はすべてこの形で挑んだんですが、
・棒銀のさばきが難しい
・7筋からの攻めがキツい
という流れになり、後手から先攻されてそのまま攻め切られる展開になってしまったので
「もう少し落ち着いた駒組みをした方がいいかも」
という感じになりました。
急いで棒銀を狙っても簡単に先行する流れにならなそうなら受けに集中するのもアリかもしれませんね。
AIが示した大胆な一手
局面を戻します。上図は、後手が7筋の歩を交換した所です。
先ほどはここから▲3八銀 と棒銀を狙ったんですが、AIは全く違う構想を持っていました。
上図以下、▲6六角(下図)
ちょっと邪魔な飛車に働きかける▲6六角 が始まりです。
「飛車を引かせて棒銀を狙った方が攻めやすいのかな?」
と思っていたら・・・
上図以下、△7四飛 ▲7八飛(下図)
いきなり飛車をぶつける▲7八飛 が狙いでした。
「力戦には力戦」
「相手も想定してない局面に持っていって力勝負をする」
という感じの強気の一手ですね。
実戦は△7六歩(下図)と飛車交換を拒否しましたが・・・
まずは飛車交換した後の変化からザっと解説します。
▲7八飛 に△同飛成 と飛車交換に応じた場合
飛車をぶつけた上図。
人間同士の将棋の場合、気合負けしない△7八同飛成(下図)といきたいですよね。
上図以下、▲7八同銀 △2七飛(下図)
シンプルに竜を作る△2七飛 がパッと見えるので
「研究範囲ですよ」
と言わんばかりにノータイムで打つのが心理的に効きそうです。
ただ、これには先手にも対処手段があります。
上図以下、▲5五角(下図)
先に▲3八銀 と上がったり、▲2八歩 とガッチリ受ける手なども候補にありましたが、攻めっ気がある▲5五角 の方が面白そうです。
ここで
・△7三歩 と受ける手
・△2九飛成 と攻め合う手
に分かれたので、それぞれ簡単に解説します。
△7三歩 と角成りを受けた場合
△7三歩(下図)と角成りを受ける手には・・・上図以下、▲7四歩(下図)
こじ開けにいく▲7四歩 で攻めが続きます。
上図以下、△6二銀 ▲7三歩成 △同銀 ▲2八歩(下図)
銀を7三に呼んでから▲2八歩 と受け・・・
上図以下、△2五飛成 ▲7三角成 △同桂 ▲8一飛(下図)
ズバッと角を切って▲8一飛 と打ち込めば先に寄せに入った先手ペースです。
上図以下、△7一歩 ▲9一飛成 △6五桂 ▲7二歩(下図)
香を取ってから▲7二歩 と攻めるのが一例で・・・
以下、▲同歩 でも▲同金 でも▲7六香 が強烈な一手になります。
先手玉はまだ安全なのでこのままいけば勝てそうですね。
△2九飛成 と桂を取ってきた場合
▲5五角 には△2九飛成(下図)と攻めてくる手もあります。この手には先手も攻め合います。
上図以下、▲9一角成 △7二銀 ▲8二馬(下図)
▲8一馬 ~ ▲6三馬 の攻めが早いので△7二銀 と桂取りを受けますが、▲8二馬 と銀取りに当てるのが早い攻めです。
上図以下、△1九竜 ▲7三歩(下図)
次に▲9二飛 と打つ手が厳しく、△7一香 などで受けに回っても一手一手になると判断したのか△1九竜 が推奨手でしたが▲7三歩 が厳しいですね。
△7三同桂 なら▲7四歩 ~ ▲7三歩成 で寄り筋なので・・・
上図以下、△7三同銀 ▲8一馬 △6二銀 ▲7七香(下図)
△7三同銀 と銀で取りましたが、▲8一馬 と桂を取って▲6三馬 を狙うのが早いです。
△6二銀 と受けても▲7七香 としつこく7筋を攻めれば止まりません。
以下、△7一歩 ▲7二歩 と絡んで寄り筋です。
飛車交換から△2七飛 と打つのは先手の攻めが刺さる展開になりやすそうですね。
飛車交換を拒否した本譜の進行
局面を戻します。上図の▲7八飛 のぶつけに飛車交換をすると先手が面白い展開になりやすいので、△7六歩(下図)と拒否した千星さんの判断は正しかったようです。
ただ、これはこれで先手の主張が通っているので悪くありません。
上図以下、▲7五歩 △8四飛 ▲8八銀(下図)
▲7五歩 で飛車をどかせば袖飛車の狙いだった7筋を奪って先手やや良しです。
ここで△5二玉 と囲ったのが本譜の進行ですが、△3四歩(下図)と角交換から局面を複雑化する手が気になったのでそちらに触れておきます。
上図以下、▲7六飛 △6六角 ▲同飛(下図)
この手には▲7六飛 と歩を払い、角交換には▲6六同飛 と応じるのが正しい手順のようです。
上図以下、△4四角 ▲4六角(下図)
△4四角 と飛車と銀を狙う一手には▲4六角 と打ち返し・・・
上図以下、△6四歩 ▲7九金(下図)
▲7九金 と銀に紐をつけ・・・
上図以下、△7二銀 ▲6四飛(下図)
大胆に飛車をさばくのがAIの構想でした。
上図以下、△6四同飛 ▲同角 △7三銀 ▲4六角(下図)
これで次に▲7四歩 の攻めがある先手が600点ほど良いみたいです。
△3四歩 から角交換を狙う手は正しく指せれば先手ペースになりそうですね。
穏やかな△5二玉 の進行
局面を戻します。上図で△3四歩 は先手ペースになるので、本譜は△5二玉(下図)と指して穏やかな展開になりました。
上図以下、▲5五角 △2四飛 ▲3八銀(下図)
先手は▲5五角 と角成りを見せるのが定番の攻め筋ですね。
ちょっと気になる△2四飛 には▲3八銀 と受けるのが角と連携した受けになります。
△2八飛成 と飛車を成っても▲3六歩 で角の利きを通されると香車を取れません。
この形ではよく見かける受け方なので覚えておくと役立ちそうです。
上図以下、△6四歩 ▲4六角 △4四飛 ▲7六飛(下図)
飛車を成っても得がないと見たのか後手は受けに回りましたが、▲7六飛 と歩を払った上図は先手充分ですね。
上図以下、△6二金 ▲7七銀 △3四歩 ▲7四歩(下図)
ここからは一例になります。
上図以下、△4六飛 ▲同飛 △7二銀 ▲6八金(下図)
後手が飛車切りから動いてきたので冷静に受けに回り・・・
上図以下、△1四歩 ▲4八玉 △2八角 ▲1八飛(下図)
△2八角 の悪手を指してきたので▲1八飛 と捕獲して先手勝勢になりました。
あとは下図のように7筋を狙う形になり・・・
上図以下、▲7三歩成 △同桂 ▲7四歩(下図)
シンプルに7筋から手を作ったら数手後に▲7三歩成(下図)から殺到し・・・
△7一香(下図)の反撃に・・・
上図以下、▲6二馬 △同玉 ▲5四銀(下図)
飛車を見捨てる寄せを決めてAIが圧倒しました。
投了図はこちらです。
最後に
「千星さん」に先手番で挑み、▲7六歩 スタートで▲2六歩 の居飛車に進めると下図の局面に進むのはほぼ確定します。ここからお互いに飛車先の一歩交換をして下図の局面になった後・・・
袖飛車に威張られる展開が嫌ならば、▲6六角 ~ ▲7八飛(下図)と飛車をぶつける手がいいかもしれません。
「空中戦」と「振り飛車」の感覚が必要になりますが、7筋を狙う後手の主張は消せるので力勝負に持ち込めますから。
王道の相居飛車っぽく進めて袖飛車に苦労してるなら使える手なので、コレといった対策が見つからない方は1度お試しください。