「下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究」
のレビューをしたいと思います。
この本は、ノーマル三間飛車での居飛車穴熊対策として小倉久史先生が研究した独特な攻略手順を学べる本です。
本書を一通り読めば
・相穴熊から爽快に攻める手順
といった知識が手に入るので、ノーマル三間飛車が好きだけど居飛車穴熊に苦戦している人の助けになると思います。
「穴熊を相手にすると駒組みで優位に立てなくて辛い・・・」
「さばいて勝ちたいけど大駒の交換は不利になるから無理だし・・・」
「どうにか穴熊相手にも振り飛車らしく指す形を作れないもんか・・・」
みたいな悩みを抱えている三間飛車党の方に読んでもらいたい本ですね。
この記事では
・大まかな内容
・収穫のあった部分
に触れながら感想を書いていくので、購入を迷っている方のお役に立てれば嬉しいです。
- 「下町流三間飛車」とは・・・
- 石田流封じを打破する急戦策が学べる
- 石田流に組んだ後の指し方が参考になる
- 下町流ならではの石田流
- 相穴熊のコツと攻め筋が学べる
- 講座のおさらいになる実戦譜が6例ある
- 最後に
「下町流三間飛車」とは・・・
「下町流三間飛車」というタイトルを見た時、
「下町流って何?」
「駒組みの特徴を現してるの?」
といった疑問を持つ方もいますよね。
名前から戦法の概要が見えてこないと手が出しずらいと思うので、まずはそんな疑問を解決しておきます。
これはそんなに深い意味はなく、考案者の小倉先生が上京してからずっと下町に住んでいることから「下町流」と名付けられたそうです。
下町流 三間飛車
と聞くと古風な戦法感がある名前ですが
小倉流 三間飛車
という意味なので
・大野流
・鈴木流
・久保流
のように新手を指した棋士の名前を取って「〇〇流」とつける流れにちょっと一工夫した感じですね。
石田流封じを打破する急戦策が学べる
本書の売りは居飛車穴熊に石田流を狙った時、相手の指し方によって従来とは一味違う様々な攻め方が学べる所です。第1章では「下町流三間飛車」を象徴する手順から始まります。
オーソドックスに駒組みを進めると▲7五歩(下図)から石田流を目指すと思いますが・・・
上図以下、△5四歩 ▲6八角(下図)
△5四歩 と突いた手に▲6八角 と引き・・・
上図以下、△5三銀 ▲7六飛 △6四銀(下図)
何の策もなく▲7六飛 と浮くと△6四銀 と出られ・・・
上図以下、▲7七桂 △4二角(下図)
▲7七桂 に△4二角 と引く手が好手で
「次の△7五銀 が受からないから石田流に組むのは難しい」
というのが定説ですよね。
単純に石田流を狙うと作戦負けになりやすいんですが、「下町流三間飛車」は△5四歩(下図)の局面で違う発想の攻め筋から穴熊を攻略します。
石田流に組むことしか考えていない場合、この手順は浮かばないと思うので、これを知れるだけでも本書を読む価値があります。
ここからの5手はすごいですよ。
石田流を封じるパターンで安心してる居飛車党をビックリさせたければ必見です。
石田流に組んだ後の指し方が参考になる
第2章では石田流を牽制する△5四歩 ではなく、△1一玉 から普通に組ませる変化も解説されています。定番の石田流(下図)に組んだ形から・・・
・基本となる攻め筋
・後手の無理攻めに対応する手順
をしっかり解説しているので、これらの手順を覚えれば石田流の利点を活かした筋のいい攻めができるようになりますね。
個人的には「無理攻めへの対応手順」を見て、実戦で応手を間違えていたことに気付けたのが大きかったです。
ここを修正できればもう少し上手い石田流を指せる気がしました。
下町流ならではの石田流
第3章ではオーソドックスな石田流とはちょっと違う「下町流」ならではの石田流が学べます。上図は後手の穴熊が完成し、ここからどう指すかという局面なんですが・・・
ここで大駒の交換を可能にして「さばき」を狙う「下町流」ならではの一手が出ます。
パッと見では
「そっち?」
「穴熊相手に大丈夫なの?」
「それで戦える?」
という感じがする一手に見えましたが、ここからの手順を見ると振り飛車らしい指し回しでかなり面白そうでした。
104ページに書かれたこの形ならではの攻め筋が特によかったです。
ちょっと違う発想の石田流としてこれから使って見ようと思いました。
相穴熊のコツと攻め筋が学べる
居飛車穴熊に石田流で対抗する手順の後は「相穴熊」(下図)
の解説に進みます。
堅さ負けを嫌う人向けの手順ですね。
上図から「下町流」ならではの駒組みで居飛車穴熊の攻略を狙います。
先手番と後手番の両方に触れ、
・先手番では理想的な攻め筋
・後手番では千日手も視野に入れた指し方
を解説しながら、相穴熊を指すコツとして
・〇〇を合わせる
・穴熊ならではの攻め形からの強襲
・攻めを続ける〇〇〇の一手
といったポイントになる考えや手順を学べるので、美濃囲いに限界を感じて穴熊を指したくなった人に役立つと思います。
講座のおさらいになる実戦譜が6例ある
下町流ならではの・石田流
・相穴熊
の手順を学んできたら、最後は講座の元になった小倉先生の実戦譜で復習ができます。
下町流の流れを掴める6例の実戦譜をザっと並べれば「独特な指し回しの感覚」を掴めると思いますよ。
それぞれの基本となる攻め筋をおさらいしたい時に並べるといいですね。
最後に
ノーマル三間飛車で居飛車穴熊に苦労してるなら・石田流のバリエーション
・相穴熊の指し方
といった有力な穴熊攻略の手順が学べる
「下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究」
はオススメの一冊です。
本書を読めば今までと違う発想が生まれて何かしらのヒントになると思いますよ。