今回は、古い本なのに中身が新しい感じがした
のレビューをしたいと思います。
この本は
・筋違い角
・相振り飛車
というマイナー戦法に「独自の構想」を加えて進化させた
・新感覚 筋違い角
・超感覚 相振り飛車
という作戦を学べる本です。
1997年に発売した古い本ではありますが、独特な手順を解説しているので
今(2022年11月)見ても新しい発見がある面白い本
になっています。
「筋違い角」と「相振り飛車」で力戦模様の局面に誘導し、
相手の得意戦法は使わせず、こちらの土俵に引きずり込んで勝つ
という勝ちパターンを絞って勝利を掴むアマチュアならではの戦略として参考になりました。
独特な内容なので詳しい形には触れられませんが、一通り読んだ感想を書いていくので、古本屋などで見かけた時にちょっと興味を持ってもらえたら嬉しいです。
振り飛車封じの「新感覚 筋違い角」が面白い
この本の売りは・ガッチガチの振り飛車党に飛車を振らせない
・その上で自分だけ深く研究した形で優位に立つ
という「振り飛車封じ」のために開発された手順を学べる所です。
先手番の時、相手が振り飛車党なら
初手から、▲7六歩 △3四歩(下図)
と角道を開けあうのが定番のスタートなのを利用して・・・
上図以下、▲2二角成 △同銀 ▲4五角(下図)
いきなりの角交換から「筋違い角」に進めて相手の得意戦法を封じ、そこまで研究をしていない力戦に引きずり込む所から始まります。
振り飛車党にとって「筋違い角」は課題戦法ではあるので、ある程度は対策をしていると思いますが、
新感覚 筋違い角
と名付けられた
「定番の筋違い角とはちょっと違う形(1997年当時なら革新的だった?)」
で研究を外すのが面白い所です。
ただ単に研究を外すための奇手を指すのではなく
・3四の歩がない欠点を突く
・得した一歩を有効に使う
・筋違いに打った角をしっかり攻めに活用する
など、「筋違い角」の利点をキッチリ活かした深い研究の裏付けがある手順なので
相手が無難な駒組みをすると狙い通り作戦勝ちの局面に持ち込める
という恐ろしさがあります。
「あれ? マイナー戦法だと思ってたけど主力戦法になるくらい強いかも・・・」
と、急に「筋違い角」を指したくなる魅力的な手順が目白押しで、読みながらワクワクしましたね。
1990年代のまだAIがなかった頃、独自に研究をしてこの手順に辿り着いた著者を尊敬します。
現代だと筋違い角を打った先手の作戦としては
「角を7筋方面に引いて四間飛車にする」
のがメジャーかもしれませんが、本書では
2つの解説があり、相手の動きに合わせて指しやすい形を選べるので、どちらの党でもいつもの感覚を活かして指せると思います。
個人的には「居飛車」の駒組みで
「筋違いに打った角を活かす攻め筋」
を学べたのが大きかったですね。
王道の角換わりに近い無理のない手順なのも覚えやすくて良かったです。
今となっては「将棋ウォーズ」などで似たような形を見たことがありますが、
角の使い方がちょっと違う「新感覚 筋違い角」
は、現代でも定番の定跡書しか読んでいない人になら有効な作戦だと思うので
相手の研究を外す地雷作戦
の1つとして本書を読むと思わぬ勝ちを拾えるかもしれませんよ。
「超感覚 相振り飛車」の発想が面白い
「新感覚筋違い角」は先手番の作戦なんですが、後手番でも使える作戦として超感覚 相振り飛車
という独自路線の「相振り飛車」も解説されています。
初手から、▲7六歩 △3四歩 ▲9六歩(下図)
と進めるのがスタートです。
本書では先手番で解説されているので▲9六歩 と様子見をしますが、後手番なら端歩は省略されます。
上図以下、△4四歩 ▲7七角(下図)
△4四歩 と角道を止めたら▲7七角 と上がるのがポイントです。
ここから△3二飛 と「三間飛車」にした形での「急戦」と「持久戦」への指し方と・・・
△4二飛(下図)と「四間飛車」にした形での「急戦」と「持久戦」への指し方が解説されています。
上図以下、▲8八飛(下図)
先手は「向かい飛車」に振り、角道を通したまま駒組みをするのが「超感覚 相振り飛車」です。
これだけなら普通の相振り飛車なんですが、目玉は「玉の囲い方」にあります。
ここが本書の売りなので詳しく書けないんですが
「居飛車」で使われる「あの囲い」
を相振り飛車に応用し
・飛車打ちに強い
・玉頭からの攻めも狙える
といった利点を活かした攻め筋で「従来の定跡で止まっている振り飛車党」を圧倒します。
これは現代でも見かけない形だと思うので、1997年の古書から25年の時を越えて
「相振り飛車の新しい発想」
を得られるかもしれません。
もしかしたら振り飛車党の人の方が得るものが大きい本になる可能性がありますね。
最後に
独自の研究による振り飛車への対策を解説した本書は「振り飛車党に勝てない・・・」
と悩んでる居飛車党や
「相振り飛車の指し方を研究してる」
といった振り飛車党にオススメできます。
「古い本だから手に入りにくいし、今さら読んでもアレかなぁ・・・」
という感じがあるかもしれませんが、
「AIで最新の形を研究したら古い形に戻った」
というパターンも0ではないので、こういった独自路線を突き進んだ古書を読むのはけっこう勉強になりますよ。
AIのない時代に人間が編み出した戦法は見ていて面白いですしね。
この記事を読んだのも何かの縁なので、古本屋などで見かけたらちょっと手に取ってパラパラと目を通してみてください。
「あ、ちょっと面白いかも」
と思ったら、本書をキッカケにほとんどの人がそこまで深く研究していない「筋違い角」を徹底的に研究して
「先手番で角道を開けあったら負けない」
と言えるくらい自信をつけるのも楽しいかもしれませんよ。