今回は、角筋を通した中飛車の基礎が学べる本
のレビューをしたいと思います。
この本は、鈴木大介先生ならではの感性で
「ゴキゲン中飛車」
を解説した本です。
細かな定跡手順の解説というよりは
・中飛車ならではの狙い筋
・勝ちやすい形を重視する
・理想形を目指す流れ
といった「将棋の本筋」に焦点を当てた内容になっています。
本書を読めば
「中飛車を指す時の感覚」
を磨きながら、将棋を指す上で大切になる
「なぜその手を指すのか」
「どういう方針で指せば勝ちに繋がるか」
という大局観の成長にも繋がると思いますよ。
この記事では
・大まかな内容
・収穫のあった部分
に触れながら全体の感想を書いていくので、購入を迷ってる方の参考になれば嬉しいです。
- 先手番中飛車を通して基本的な狙いや指し方を学べる
- 「相振り飛車」にされた時の攻め筋が面白い
- 後半の後手番中飛車では「ゴキゲン中飛車」の懐かしい手順を学べる
- 定番の変化にも触れている
- 2008年頃は「銀対抗」が否定されていた?
- 最後に
先手番中飛車を通して基本的な狙いや指し方を学べる
本書では初手▲5六歩(下図)から始まる先手番中飛車に対し・・・△8四歩 と△3四歩 の両方の応手について触れていますが、どちらも数手後に△5四歩(下図2例)と後手が5筋の位を取らせない形を中心に解説しています。
5筋の位を取る「王道のゴキゲン中飛車」の解説は後半の後手番中飛車で触れ、先手番では中飛車ならではの「駒組み」や「攻め筋」に焦点を当てている感じですね。
ここからの解説では
・▲1六歩を突くタイミング
・5筋の歩を交換した後の指し方
・左金の使い方
・注意すべき反撃の手
・中飛車の理想形
・理想形からの攻め筋
などの要点に触れながら鈴木大介先生ならではの感性も語られているので、中飛車を指す上で参考になる方針や考え方を学ぶことができます。
漠然と手を暗記するのと違い、戦法全体の流れを掴める解説は参考になりましたね。
他の振り飛車を指す時でも役立つ考え方が学べたのは大きかったです。
「相振り飛車」にされた時の攻め筋が面白い
初手に▲5六歩 を突き、すぐに▲5八飛(下図)と回る形だと・・・「相振り飛車にはあまり向かない」
と言われている中飛車の欠点を突いて△3二飛(下図)と飛車を振る変化も考えられます。
「ちょっと駒組みがしずらいかも・・・」
という感じになってたりしませんか?
本書ではこういった悩みにもしっかり対応しています。
ここから中飛車を活かして後手陣に攻め込む手順が解説されていますから。
急所の攻め筋になる「▲〇〇歩」の一手は知らなきゃ指せなそうな手だったので、相振り飛車に困ってる中飛車党なら役立つと思いますよ。
後半の後手番中飛車では「ゴキゲン中飛車」の懐かしい手順を学べる
先手番で中飛車の基本的な指し方を学んだ後は、後手番の「ゴキゲン中飛車」に進みます。本書では「ゴキゲン中飛車」の基本図(下図)から・・・
先手が▲2四歩(下図)と飛車先の歩交換にいけないかを模索していた頃の手順が解説されています。
上図の仕掛けは無理なので
・▲5八金右
・▲7八金
などでちょっと陣形を整えてから仕掛けるのが定番ですが、いきなりの▲2四歩 をメジャーな定跡とちょっと違うトガめ方をしていたのは参考になりました。
超急戦を誘う▲5八金右(下図)でも・・・
「勝ちやすい形を目指す」
を体現するあの一手が推奨されていたりと、この辺は鈴木先生ならではの感性が見える手順だと思います。
これは個人的な話なんですが、▲7八金(下図)と受けた形の解説を見たら・・・
私が高校生の頃に居飛車を持ってよく見た手だったので、昔を思い出してちょっと懐かしくなっちゃいましたよ。
「あの頃もこういう手をやられてたなぁ・・・」
という振り飛車らしい指し回しは現代でも通用するものだと思います。
▲7八金 はもう見かけない気がするので、最近だと経験がなくて正しい対応を知らない人もいるんじゃないでしょうか・・・
そういった人は古い定跡を本書でおさらいすれば盤石ですね。
定番の変化にも触れている
後手番中飛車では・王道の▲4八銀(下図)
・▲2五歩 保留での▲4八銀(下図)
などに対する必要な知識が一通り解説されているので、後手番で中飛車を指すためのスタートにはピッタリの内容です。
「▲2五歩 保留の▲4八銀」なんかは いざやられるとけっこう困ると思いますし、中飛車の基礎固めとして読んでおいて損はありません。
先手が狙う定番の攻め筋を知って、軽く受け流せるようになれば楽しくなりますよ。
2008年頃は「銀対抗」が否定されていた?
本書でちょっと面白かったのは、現代でよく見る形がイマイチと判断されていた所です。2020年代の今は▲6八玉型で素早く銀を繰り出す「超速」(下図)がメジャーで・・・
後手も同時に銀を繰り出す「銀対抗」(下図)をよく見かけると思いますが・・・
本書ではチラッと△4四銀 の形に触れ、
「△4四銀 と上がる形は面白くない」
と書かれていて、違う手を推奨していました。
2008年頃は今とは違う感覚だったようです。
他の本でも「銀は5四に上がりたい」みたいな意見があった気がするので、振り飛車的には
「角筋を止めるのは嫌」
「受け一方になりそうで指しにくい」
というのが良い感覚なのかもしれません。
そういった根本感覚を否定する△4四銀 がメジャーになったのは興味深かったですね。
最後に
「鈴木大介の将棋 中飛車編」は、角筋を通した中飛車の本筋を学べるので
「現代風の中飛車を指してみたい」
「中飛車の指し方を一通り頭に入れたい」
といった、これから中飛車を覚える方の1冊目にオススメです。
メジャーな定跡を学ぶ前に
「中飛車の特徴を活かす指し方」
「目指すべき理想形への流れ」
などの基本的な部分を学べる本書から入れば手の意味を理解しやすくなると思いますよ。
「筋のいい中飛車を指す一歩目」としてぜひ読んでみてください。