今回は、終盤力を強化するなら外せない本
「寄せの手筋200」
のレビューをしたいと思います。
この本は、終盤にキッチリ玉を仕留めるために欠かせない
「寄せのテクニック」
を基本から応用まで徹底的に叩き込める本です。
効率よく寄せるために必要な
「駒の特徴を活かした上手な寄せ方」
を明確にパターン化して、局面や駒別に
「この形ではこういう寄せ方が効果的」
というのが分かるように様々なパターンを
全200問
という大量の必死問題で網羅しているので、この本の内容を完璧に理解すれば
「プロのようなスマートに収束する華麗な寄せ」
に大きく近づくことができますよ。
読む前と読む後で確実に寄せの力が変わるので、
「終盤力の強化」
をしたい方なら読まない手はありません。
・あとちょっとの所で玉を逃がすことが多い
・寄せが上手くいけば勝てた将棋がけっこうある
・優勢で終盤に入ったのに速度負けして逆転される
といった
「決められる所で決め切れない終盤をどうにかしたい」
という悩みを抱えているならぜひ読んでみてください。
寄せの問題を1つ出題します
「必死問題ってどんな感じ?」という疑問を持った方に向けて、私の実戦で現れた局面を元にこの本の雰囲気を紹介します。
上図は、私の実戦で現れた終盤を切り取ったものです。(元になった対局はこちら)
ここから玉を逃がさないように
「王手」、もしくは「詰めろ」
で迫り、最終的には受けなしの状態に追い込むのが必死問題です。
右辺から馬で迫っていますが、△6二玉 ~ △7一玉 と逃がしてしまうと捕まえにくくなります。
それを許さない手順でキッチリ玉を寄せてください。
ヒントは「退路封鎖」です。
答えは数行下の次の見出しで書きます。
必死問題の答え
では答えです。上図以下、▲7一角(下図)
この角打ちが玉の逃げ道を塞ぐ「退路封鎖」の一手です。
これで6~7筋への逃げを許しません。
▲7一角 は▲4二金 の一手詰めを狙った詰めろなので受けなければいけませんが・・・
上図以下、△7一同金(下図)
シンプルに角を取ると金と銀が壁になり左辺への逃げ道がなくなったので・・・
上図以下、▲4一銀(下図)
取れば頭金の▲4一銀 から詰みです。
上図以下、△6二玉 ▲5二金(下図)
これは比較的簡単な手順だったと思います。
答えが合っていてホッとした方もいると思いますが・・・
ちょっと待ってください!
まだ終わりではありません。
最初に打った▲7一角(下図)には後手に様々な応手があるからです。
・△5一金
・△6四歩
・△4二飛
といった受け方が考えられます。
これらをすべて読み切らなければ必死問題は終わりません。
それぞれザっと答えを解説しますね。
△5一金 と受けた場合
まずは▲4二金 の詰めろをシンプルに受ける△5一金(下図)から・・・上図以下、▲6二銀(下図)
この銀打ちの詰めろで後手玉は寄っています。
このままだと▲5一馬 や▲5三銀成 からの詰みなので銀を取るくらいですが・・・
上図以下、△6二同金 ▲5一金(下図)
後手の金がいなくなったスペースに先手から金を打ち込んで詰みです。
△6四歩 と逃げ道を広げた場合
次は△6四歩(下図)と逃げ道を広げた場合です。このまま△6三玉 と上へ逃がしてしまうと大変なのでそれを防がなければいけません。
上図以下、▲5四銀(下図)
取られる所に打つ意外な銀打ちですが、これで上部への逃げを許さず必死です。
このままだと▲4二金 や▲5三銀成 からの詰みがあり、△5四同歩 と銀を取ると▲5三金 ~ ▲4二馬 で詰んでしまいます。
なので△7一金(下図)と角を取るくらいですが・・・
上図以下、▲4三馬 △6二玉 ▲5二金(下図)
までの詰みです。
△4二飛 と受けた場合
最後は△4二飛(下図)と駒を埋めて▲4二金 の詰みを受けた場合です。飛車を取ると3三からの脱出を許すので・・・
上図以下、▲5四桂(下図)
ここに桂を打つのが玉を縛る好手です。
△5四同歩 と桂馬を取ると▲5三金 ~ ▲4二馬 の詰みなので・・・
上図以下、△6四歩(下図)
上部への脱出を狙う△6四歩 が最後の手段です。
上図以下、▲6二金 △同金 ▲同角成(下図)
6三へ逃がさないように▲6二金 と打てば詰みます。
上図以下、△4一玉 ▲4二桂成(下図)
これで無事に後手玉を寄せ切ることができました。
簡単そうに見えて意外と深い読みが隠れている
先ほど出題した上図を見て、上記の答えがすべて読み切れていた人はすごいですね。
「こういった問題をもっと解きたい!」
と思った方は「寄せの手筋200」を買えばメチャクチャ楽しめますよ。
多くの問題で「ハッ」とする受けがあり、答えを見た時に
「あ、この手は読んでなかった・・・完全に読み抜けだわ・・・」
「受けの手って色々あるんだなぁ・・・」
と、将棋の奥深さを感じられる面白い問題が目白押しですから。
実戦ではこういった読み抜けが致命傷になるので
「あと一歩の所で1秒も考えていなかった受けの手を指され、応手を間違えて逆転された」
ということが多いなら、そういった事態を避けるためのトレーニングとしても最適です。
簡単そうに見えて意外と細かい読みが必要な問題を解き、有段者になるために必要な
「読みの深さ」
みたいなものを体感すればまた1つ成長できますね。
最後に
「寄せの手筋200」では、メジャーな格言である
・玉は下段に落とせ
・玉は包むように寄せよ
・端玉には端歩
などの意味をしっかり理解できる寄せ問題や
・頭金
・腹銀
・一間竜
・退路封鎖
といった定番の手筋をどう使うのが効果的かが理解できる問題を200問も解くことができます。
普段の対局でよく見かける「実戦形の問題」ばかりなので、すぐ実戦で活かせる点も素晴らしいです。
これらの寄せのコツをしっかりパターン化して頭に入れればこれからの終盤戦での指し手が変わってきますよ。
駒を上手に使って効率よく玉を追い詰めるテクニックを学び、
スマートに収束できる終盤力
を身につけたいならぜひ読んでみてください。