脱・初心者を目指すための
5級を越える将棋講座
第15回は
基本となる手筋「金」編
として、第1回の「金と銀を使った1~3手詰め」では手数が長くて省略した
・尻金
・送りの手筋
を紹介します。
詰みに直結するパターンから
「金ならではのまとわりつくしつこさ」
で寄せ切る感覚を掴んでください。
「尻金」とは・・・
「尻金」というのは「玉の下に金を打つ一手」
のことです。(下図)
将棋では
・駒の上を「頭」
・駒の横を「腹」
・駒の下を「尻」
と人間の体に例えて呼ぶ流れがあり、手筋などで「駒の下」を狙う時があると「尻」と呼んだりします。
その「下から打った形」として特に有効なのが今から解説する「尻金」です。
パターンとして覚えておくと読みを省略できる「尻金」を代表する詰み形を紹介します。
「尻金」が刺さる詰みパターン
上図が「尻金」で詰む定番の形です。
・玉が上部へ逃げられない
・飛車の利きが下段に通っている
・玉の下に金が打てる
という条件がそろった時に飛車と連携した金が大活躍します。
その始まりがこの一手です。
上図以下、▲3一金(下図)
「尻金」の名の通り、玉の下に金を打ち込めば詰みです。
ここからちょっと手数が長いですが単純な動きなので分かりやすいと思いますよ。
△4二玉 と逃げると▲4一飛成(下図)の詰みなので・・・
逃げるなら△2二玉(下図)ですが・・・
このまましつこく金で「玉の尻」を追いかければ詰みます。
上図以下、▲2一金(下図)
上へ逃げられないので横へ逃げるしかなく、どうやっても金の王手が避けられません。
上図以下、△1二玉 ▲1一金 △2二玉(下図)
端までいったら2筋に戻りました。
ここで▲2一金 としてしまうと△1二玉 でループしてしまうので、次の一手が肝心です。
上図以下、▲2一飛成(下図)
▲2一飛成 と竜でしっかり捕まえるのが「尻金」で追い詰めた玉を詰ますパターンです。
「上へ逃げられない玉」を「金」でしつこく追い回し、最後は「竜」で仕留めるこの手順が「尻金」を使った詰みの基本です。
最初の局面(下図)を見た瞬間、
「▲3一金 で詰み」
と気付けるようになれば「尻金」の基本は大丈夫です。
最後にこの形に持っていければ詰みと分かると読みを省略できて楽になりますよ。
送りの手筋とは・・・
次は金の手筋としてメジャーな「送りの手筋」
を紹介します。
「送りの手筋」というのは
金を取らせて玉を奥へ進ませる一手
のことなんですが、実例を見た方が早いのでさっそく解説します。
玉を横へ送る「送りの手筋」
上図は「7二の飛車」の利きを「4二の銀」でガードしてる所です。
ここで金を有効に使うと4二の銀を取りながらスマートに後手玉を詰ますことができます。
もし上図を見て
「▲5二金 と打って、銀取りにしながら迫る感じかな?」
と思った人は次の一手に感動すると思いますよ。
上図以下、▲2二金(下図)
タダの所に捨てる▲2二金 が「送りの手筋」と呼ばれる好手で、このまま詰んでいます。
△4一玉 と逃げると▲5二金 の詰みなので△2二同玉(下図)と取るしかありません。
金を犠牲に「玉を2二へと送る」ことができました。
これで銀が浮いたので・・・
上図以下、▲4二飛成(下図)
守りの要の銀を取ってしまえば後手に受けがありません。
上図以下、△3二金 ▲3一銀(下図)
もし指すなら△3二金 と合駒するくらいですが、▲3一銀 と取ったばかりの銀を「一間竜」の形で打てば・・・
上図以下、△1二玉 ▲3二竜(下図)
2二に合駒しても竜で取れば詰む「合駒利かず」の形で詰みました。
最初の図(下図)のような
「玉を守る駒が1枚だけ」で「玉の利きが外れれば取れる形」の場合・・・
▲2二金(下図)の「送りの手筋」でムリヤリ引き剥がすのは有効です。
もし初手に▲5二金 と打つ重い手が浮かんだ方は、この記事をキッカケに
上図の▲2二金 から△同玉 ▲4二飛成(下図)
と「送りの手筋」でポン・ポン・ポンと軽快にリズムよく寄せる
「スピード感のある手順」
も浮かぶようになってください。
こういう手がパッと見えるようになると寄せが楽しくなると思いますよ。
玉を縦に送る「送りの手筋」
送りの手筋には「横」だけじゃなく「縦」に送るパターンもあるので紹介します。上図は「居飛車」の玉を追い詰めた局面です。
ここで持ち駒の「金」を使った「送りの手筋」で後手玉を詰ます手順があります。
基礎を学んだ後の実戦詰将棋として楽しみたい方はここで考えてからスクロールしてください。
では答えです。
上図以下、▲2四金(下図)
玉の頭から金を打つのが「縦」の「送りの手筋」です。
理屈は同じですが、「横」なら気付いても「縦」だと見落とすこともあるので紹介してみました。
上図以下、△2四同玉 ▲2二飛成(下図)
2二の金が浮いたので▲2二飛成 と取れば詰み筋ですね。
△3五玉 と逃げるのは▲4五金 の詰みなので・・・
上図以下、△2三歩 ▲2五金(下図)
△2三歩 と合駒しますが、▲2五金 と打つのがさらなる「送りの手筋」で狭い所に玉を追い詰める好手です。
上図以下、△2五同玉 ▲2三竜(下図)
下から竜で迫れば、どう対応しても金打ちで詰みます。
以下、△2四歩 の合駒なら▲2六金 ですし・・・
△3五玉 なら▲4五金(下図)の詰みです。
類似の形をけっこう実戦でも見かけるので、「縦の送りの手筋」が使える場合は積極的に狙ってみてください。
~応用問題~「腹金」と連携した「尻金」
最後に「送りの手筋」の亜種と「尻金」を使った応用詰め将棋を出題します。
上図の局面で最初に紹介した「尻金」を狙いたいんですが、あいにく玉の下に桂がいて金が打てません。
どうすれば「尻金」の形に持っていけるでしょうか・・・
答えが浮かんだらスクロールしてください。
では答えです。
上図以下、▲3二金(下図)
玉の横から金を打つ「腹金」が正解です。
△1二玉 と逃げると▲2一飛成 の詰みなので取るしかありません。
上図以下、△3二同玉 ▲3一金(下図)
玉を3筋に近づけた効果で▲3一金 の尻金を打つことができました。
▲3二金 は「送りの手筋」とは逆の「引き寄せる金」みたいな一手ですね。
上図以下は最初に解説した通り、△2二玉 ▲2一金 △1二玉 ▲1一金・・・と追いかけ、最後に▲2一飛成 と竜で迫れば詰みです。
問題図を見た時に
「玉が3二にいれば「尻金」で詰みか・・・」
と気付いて▲3二金 が見え、
「▲3一金 からは読まなくても詰んでいる」
と理解した上であっさりスクロールできた人はこの数分で成長していますよ。
今日覚えた
・シンプルな「尻金」
・玉を動かす金捨て
をさっそく実戦で使ってみてください。
最後に
基本となる手筋「金」編として
・尻金
・送りの手筋
を使った詰み手順を紹介しました。
・▲3一金 の詰み形(下図)
・玉を送る金捨て(下図)
は実戦でもよく出てくるのでしっかり覚えてください。
こういった手がパッと浮かぶようになれば5級は越えていますよ。
※「5級を越える将棋講座 第16回」は下記リンクからどうぞ。
【5級を越える将棋講座 ⑯】銀の手筋1「割り打ちの銀」「タスキの銀」を解説【スキを突いた両取り】 - 人生詰んだニートのブログ