今回は、羽生世代の将棋が好きな方にオススメな一冊
「佐藤康光の一手損角換わり」
のレビューをしたいと思います。
この本は、一手損角換わりを指す上で必須となる
・対 早繰り銀・棒銀
・対 腰掛け銀
・対 右玉
といったメジャーな指し方への対策を
・羽生 善治 四冠
・森内 俊之 九段
・三浦 弘行 八段
・木村 一基 八段
という錚々(そうそう)たる面々との実戦譜を交えて解説している本です。(段位やタイトルは当時のもの)
発売したのが2010年というのもあり、2022年の今となってはちょっと懐かしい定跡と棋譜ではあるので
といった方向けのコレクション的な本だと思います。
最新の定跡を学ぶならAmazonなどで「一手損角換わり」と検索して「新しい順」から良さそうな本を選んだ方がいいですね。
この記事では、ずっと買おうと思っていたけど後回しにし続け、2022年にようやく読んだ私が
・収穫のあった部分
・見所
について感想を書いていくので、何か参考になったら嬉しいです。
「対 早繰り銀・棒銀」で参考になった所
「一手損角換わり」で課題になるのが「一手得している先手が速攻で▲3五歩(下図)と仕掛けてくる早繰り銀への対策」
なんですが、ここの対応で
上図以下、△4四歩(下図)
として「歩越し銀には歩で対抗」の格言通りに受ける手や・・・
▲3五歩 を△同歩 と取り、▲3五同銀(下図)ときた手に対し・・・
上図以下、△6五歩(下図)
から△6四角 を狙う手がなぜ指されなくなったのかを知れたのは参考になりました。
▲3五歩 の仕掛けを△4四歩 と受けるのはよく「きのあ将棋」の「郷谷さん(上級)」にやっていましたが、
「イマイチよくならなかったのはそういうことだったのか・・・」
と知れたのは大きかったですね。
他にも、「棒銀」で端から仕掛けてくる▲1五歩(下図)で・・・
上図から数手進んで先手が端の突破を狙う▲1九香(下図)としてきた手に対し・・・
ここから数手後にある「後手の受けの好手」も参考になりました。
今後も端から殺到される手順をやられたら使えるかもしれません。
あとは端攻めではなく▲3五歩(下図)と早繰り銀風に攻めてくる棒銀に対し・・・
銀の立て直しを図る▲3七銀(下図)への後手の反撃手順はちょっと感動しました。
ここからのアグレッシブな後手の手順は見ものだと思います。
今となってはちょっと古いかもしれませんが、
「早繰り銀・棒銀への対策」
としての知識として入れておく価値がありますよ。
「相腰掛け銀・右玉」で参考になった所
「一手損角換わり」が注目されたキッカケが「相腰掛け銀」になった時に△8五歩 と伸びていない「△8四歩型」(下図)なんですが・・・改めて△8四歩型 を活かした手順をサラッと学べたのは良かったです。
「対 右玉」では成功例として「名角」と言われる角打ちが紹介されています。
そこからの攻め筋が見事で、右玉攻略の流れとして頭に入れておく価値があると思いました。
参考棋譜が最高
最初に書いたように・羽生 善治 四冠
・森内 俊之 九段
・三浦 弘行 八段
・木村 一基 八段
といったトップ棋士との実戦譜を交えて解説しているんですが、これらの棋譜は中終盤の攻防に見ごたえがあって最高です。
特に
・「対 早繰り銀」の森内 俊之 九段戦
・「対 右玉」の木村 一基 八段戦
は中終盤の受けが見事で一見の価値がありますね。
ちょっと懐かしい一手損角換わりの名局を並べながら
「一手損角換わりを指すにはここまで終盤力が必要なのか・・・」
というアマチュアには厳しい現実みたいなものを感じられると思います。
羽生世代の将棋が好きな人にはこれらの棋譜を解説付きで見られるだけでも価値があるんじゃないでしょうか。
最後に
「佐藤康光の一手損角換わり」は「一手損角換わり」を指す上で必要な
・対 早繰り銀・棒銀
・相腰掛け銀
・対 右玉
の定跡を羽生世代を中心とした9例の実戦譜から学べるので、ちょっとレトロな将棋ファンにとってかなり楽しめる一冊だと思います。
「一手損角換わり」に関する最先端の定跡を求めている方は別な本を読んだ方がいいですね。
・佐藤 康光先生のファン
・羽生世代の将棋が好き
という方はファングッズの1つとしてオススメなので、興味があったら候補に入れて検討してみてください。