脱・初心者を目指すための
5級を越える将棋講座
第19回は
基本となる手筋「角」編
として「王手飛車」などの大技を掛ける
「両取りの角」
を紹介します。
初心者の頃にやらかしがちなミスをとがめる
「絶好の角打ち」
のパターンを知り、ワンランク上の角使いをマスターしてください。
「両取りの角」とは・・・
「両取りの角」というのは「角」の利きが2枚の駒に当たる所に打つ一手
のことです。(下図)
角ならではの盤面に広く通った利きを最大限に利用した一手ですね。
上図のように王手を掛けながら「飛車取り」にもなっている
「王手飛車」
が「両取りの角」を代表する気持ちいい一手です。
稀に「罠」として「両取り」を誘うこともありますが、基本的には相手のミスをトガめた時に生じる一手なので
「決まれば勝ち」
と言っても過言ではない威力を持っています。
決め手になる「両取りの角」が見えているか
が勝負の分かれ目になるため、色々なパターンの角打ちを知っておくと役立ちますね。
実戦でもよく見かける「両取りの角」を5つ紹介するので
「決め手になる角打ち」
がパッと見えるようになってください。
① ハメ手での「飛車・銀」両取り
まずは、私が中学生の頃に初めて食らった「ハメ手」で生じた「両取りの角」から・・・上図は、▲2五歩 に△3三桂 と跳ねられ、何やら怪しい雰囲気が漂った局面です。
当時、実力はそんなに差がない友人の舐めプとしか思えない△3三桂 に
「お前、まじめにやれよ」
と苛立ちを隠せない一言を発し・・・
上図以下、▲2四歩 △同歩 ▲同飛(下図)
相手の罠とは気づかず飛車先の歩を交換したのが地獄の始まりでした。
「▲2三飛成 とか▲2三歩 が受からないからもう勝ちじゃん」
と楽観していたんですが・・・
上図以下、△4五桂(下図)
△4五桂 が「ちょっと基本を覚えて調子に乗ってる初心者」の油断を突く一手で・・・
上図以下、▲4八銀(下図)
「もう何をやられても勝ち」
と思っていた私は手拍子で▲4八銀 と上がって△5七桂成(不成)を受けたため、絶好の両取りが決まる形になってしまいました。
上図以下、△8八角成 ▲同銀 △3三角(下図)
角交換から△3三角 と打たれ、「あっ」と気付いても時すでに遅し・・・
飛車・銀の「両取りの角」をモロに食らっては成す術がありません・・・
▲4八銀 と受けさせて▲2八飛 の横利きで受ける手を消すとは・・・
なんて上手い手順なんだ・・・
この時、友人は本か何かで覚えた通りに進んだ嬉しさから
「決まったぁ!『鬼殺し』」
とか言ってメッチャ喜んでましたね。
後日、私が本で見た「鬼殺し」とはちょっと形が違うけど、これも「鬼殺し」の一種なんでしょうか・・・
「無条件に飛車先の一歩交換ができればちょっと有利」
という浅い知識を信じて疑わなかった初心者の裏をかく見事な手順でした。
「ハメ手」に限らず、不用意に飛車先の一歩交換をすると△3三角 の狙いはあるので、
あまりにもアッサリ一歩交換を許してきた
という場合は警戒するのが大切ですね。
② 居飛車のスキを突く定番の両取り
上図は、先手の「四間飛車」に対し、後手が「松尾流穴熊」に組もうとした仮想図です。
「すんなり組まれては敵わん」
と▲4五歩 △同歩 と仕掛けた所ですね。
ここから後手が受けをミスした場合、定番の両取りが掛かる形になります。
上図以下、▲6四歩 △同歩 ▲4五桂(下図)
6筋を突き捨ててから▲4五桂 と角取りに跳ねた手に・・・
上図以下、△4四角(下図)
△4四角 と上に逃げたのがミスでキレイな両取りが掛かる形になりました。
3手後に「対 居飛車では定番の角打ち」があります。
上図以下、▲4四同角 △同金 ▲7一角(下図)
この▲7一角 が居飛車のスキを突いた角打ちです。
キレイに「飛車・金」の両取りが決まっていますね。
矢倉などの相居飛車の将棋でも5筋を突いた形では常に狙いとしてある一手になるので、▲7一角 は覚えておくと役立ちますよ。
③ 居玉での早繰り銀をトガめる「王手飛車」
上図は、角換わりに進み、後手が居玉のまま「早繰り銀」からの速攻を狙っている所です。
怖い局面ですが、ここから後手が一直線に攻めてくると「王手飛車」で反撃する手段があります。
上図以下、▲5八金 △7五歩(下図)
パッと見では先手の受けが一手遅れている感じですが・・・
上図以下、▲7五同歩 △同銀 ▲7六歩(下図)
この形の場合、堂々と▲7六歩 から銀交換を誘うのが好手になります。
ここで気付いて△6四銀 と引き返せば何事もないんですが・・・
上図以下、△8六歩 ▲同歩 △同銀(下図)
止まらず銀を突っ込んでくると・・・
上図以下、▲同銀 △同飛(下図)
後手陣の不備を突いた絶好の「両取りの角」で先手勝勢になります。
上図以下、▲9五角(下図)
これ以上ない典型的な「王手飛車」が決まりました。
この▲9五角 は、ほとんどの人が「棒銀」や「早繰り銀」を覚えたての頃に一度は食らったことがある「王手飛車」じゃないでしょうか・・・
これを機に
「玉を囲うのって大事なんだな・・・」
って気付くのが初心者あるあるですよね。
この王手飛車は常に狙い筋なので、「棒銀」や「早繰り銀」で攻める時は
・居玉を解消する
・△9四歩 と突いて▲9五角 を消す
といった一手を忘れないようにしましょう。
④ 早石田での「王手飛車」と「両取り」
上図は、先手が「早石田」に進め、後手が△8五歩型の居飛車を選択した所です。
ここからお互いに玉を囲って自陣を整えるのが定番なんですが、最初に紹介した「鬼殺し」を食らった私のように
「飛車先の一歩交換ができれば有利」
という考えがある初心者だと次の一手を指しがちです。
上図以下、△8六歩(下図)
弱点の角頭を狙えば受けが難しそうに見えるので指したくなる一手ですよね。
でもこれは「早石田」が待っている一手です。
上図以下、▲8六同歩 △同飛(下図)
一歩交換をして、次に△8七飛成 もあるから後手ペースに見えなくもないですが・・・
ここから「王手飛車」を狙う上手い反撃があります。
上図以下、▲7四歩(下図)
この歩突きが好手で後手は困っています。
上図以下、△7四同歩(下図)
シンプルに取ると・・・
上図以下、▲2二角成 △同銀 ▲9五角(下図)
7三が開いたので角交換から▲9五角 の「王手飛車」が決まって先手勝勢です。
▲7四歩 を取らず、△6二銀(下図)と受けても・・・
今度は「最初に紹介した『鬼殺し』と類似の両取り」があります。
上図以下、▲2二角成 △同銀 ▲7七角(下図)
「王手飛車」よりは勝ち切るまでが難しいですが、▲7七角の「飛車・銀」両取りで先手勝勢です。
「角が向かい合った状態での飛車先の一歩交換は危険」
というのを象徴する手順ですね。
これらは1回やられて気付くパターンでもあるので、初見の初心者が突っ込んできたら
「両取りの角」
を的確に使ってトガめれば圧倒的大差で勝つことができますよ。
⑤ 受けに有効な「両狙いの角」
今から紹介するのは「両取りの角」の亜種です。ダイレクトな「両取り」ではなく、
受けが必要な「詰めろ」と共に駒取りに当てる「両狙い」
になります。
「こういう使い方もあるのか・・・」
という一例として頭に入れておいてください。
上図がその「両狙いの角」が有効な形になります。(現在、先手番)
お互いに「と金」が急所にいて
「▲5三と と△6七と の攻め合いはどちらの勝ちか」
という局面で、AIで検討すると▲5三と の方が早いらしくシンプルに攻め合えば先手の勝ちだそうですが・・・
「1手ミスれば負け」
という怖い局面なので踏み込むには勇気がいります。
こういった時、攻め合って勝つ自信がなければちょっと見方を変えて
「自玉を安全にしてから攻める」
という方法もなくはないです。
そうやって「まずは受ける方針」で冷静に局面を見ると
5七の「と金」さえいなければ後手の攻めは細い
というのに気付くと思います。
「じゃあ『と金』を取れば解決かな?」
と手を探すと「両狙いの角」が見えてきます。
それがこの一手です。
上図以下、▲4六角(下図)
この一手が、ただの「と金」取りに見えて▲7四桂 △9二玉 ▲8二金 の詰めろになっている「両狙いの角」です。
後手は自玉を受けるしかないので・・・
上図以下、△6四歩 ▲5七角(下図)
▲5七角 と要の「と金」を取れば、受けに回ってから先手が一方的な攻めを狙う展開に持ち込めます。
上図以下、△6七銀 ▲4八歩(下図)
△6七銀 から強引に攻め合いにきても▲4八歩 と受けておけば大丈夫です。
上図以下、△7八銀成 ▲同銀 △3七飛成 ▲4七銀(下図)
▲4七銀 まで進めれば後手から攻めるのが難しくなったので、あとは悠々と▲5三と から迫れば勝ち切れます。
今回は受け勝つパターンとして「両狙いの角」を紹介しましたが、場合によっては
「詰めろ飛車取り」
のような「攻める両狙い」もあります(下図)
上図は飛車の位置が2八に変わっただけで致命傷になる一例です。
もし△6四角 と受けても▲2八角 △同角成 ▲2二飛(下図)
と指せば先手の勝ちになります。
実戦では「王手飛車」のような分かりやすい手よりも「詰めろ」を含みにした「両狙い」の方が多いですね。
受けないと負けになるちょっと読みの隠れた「両狙い」が指せるようになれば5級を越えて2級 ~ 初段クラスだと思いますよ。
最後に
基本となる手筋「角」編として
「両取りの角」
を紹介しました。
・△3三角 の「両取り」(下図)
・▲7一角 の「両取り」(下図)
・▲9五角 の「王手飛車」(下図)
・詰めろでの「両狙い」(下図)
などは「角」を使った爽快な一手なので、実戦の中で見えるようになると楽しくなりますよ。
定番の「両取り」や「王手飛車」がパッと見えるようになれば5級越えは果たしています。
ミスを的確にトガめる上級者の将棋になって初心者を手玉に取れると思いますよ。
※「5級を越える将棋講座 第20回」は下記リンクからどうぞ。
【5級を越える将棋講座 ⑳】飛車の手筋「十字飛車」「一間竜」を解説【飛車の利きを最大限に使う】 - ダメ人間ブログ【ニートの愚痴と将棋の記録】