脱・初心者を目指すための
5級を越える将棋講座
第20回は
基本となる手筋「飛車」編
として
・十字飛車
・一間竜
を紹介します。
飛車の力を最大限に活かした使い方を覚え、優勢になるチャンスを逃さないようになってください。
「十字飛車」とは・・・ 複数の狙いを持った所に「飛車」を打つ(移動させる)一手
「十字飛車」というのは複数の狙いを持った所に「飛車」を打つ(移動させる)一手
のことです。(下図)
上図のような「両取り」が主な使い方で、形によっては「飛車」の縦と横の利きが「十字」に見えることから「十字飛車」と呼ばれています。
ここまでの講座の中でも他の手筋と連携した形でいくつか紹介してきた一手ですね。
第7回の「継ぎ歩」と「垂れ歩」で下図から「十字飛車」を狙う手順や・・・
第8回の「叩きの歩」で下図から「十字飛車」を狙う手順など・・・
定番の十字飛車はだいたい解説が終わっているので、今回の講座ではもう少し実戦的な「十字飛車」を紹介します。
もし上記2つの図を見て「十字飛車」の手順が見えない方は、リンク先で「歩と連携した十字飛車」を学んでから続きを読んだ方が分かりやすいと思いますよ。
浮いた駒を狙う「十字飛車」

上図は「△3二金型の穴熊」に組んだ後手が△8九馬 と桂を取った所です。
しかしコレは悪手でした。
持ち駒の飛車を使って「3二の金が浮いた欠点」を突いた「絶好の十字飛車」があるからです。
上図以下、▲8二飛(下図)
この「馬」と「金」の両取りが決まれば勝負ありですね。
このように「浮き駒」が縦横で並んだ時は「十字飛車」のチャンスです。
盤上に「浮き駒」がある場合、攻める側は「両取りが狙えないか」を意識し・・・
逆に「浮き駒」を抱えてる側は「両取りを食らわないか」を警戒しながら指すのが大切になります。
今回の場合、後手はちょっと我慢して▲4二金引 や▲3三金寄 などで囲いを引き締めてから動けばよかったですね。
「早繰り銀」を狙う「十字飛車」

上図は「角換わり」の将棋で後手が「早繰り銀」の攻めを狙っている局面です。
ここからシンプルに攻められた場合、十字飛車を含みにした反撃があります。
上図以下、△7五歩 ▲同歩 △同銀(下図)
△7五歩 の突き捨てから快調に銀を進出してきましたが・・・
上図以下、▲2四歩(下図)
ここで飛車先の歩を突き捨てるのが「浮いた7五の銀」を狙った反撃の始まりです。
放置すると▲2三歩成 が厳しいですし・・・
△2四同銀 は▲5五角 の飛車・香の両取りがあるので・・・
上図以下、△2四同歩 ▲2五歩(下図)
△2四同歩 と取るくらいですが、そこで▲2五歩 と「継ぎ歩」するのが好手になります。
もし▲2五歩 を素直に取ると・・・
上図以下、△2五同歩 ▲同飛(下図)
▲2五同飛 と出た手が「2一の桂」と「7五の銀」の両取りになり、キレイな「十字飛車」が決まります。
△2四歩 と受ければ▲7五飛 で銀を取られ・・・
△6四銀 と逃げれば▲2一飛成 と桂を取られながら竜を作られるので・・・
上図以下、△8六歩 ▲同歩 △同銀(下図)
△8六歩 から攻めるのが後手の最善手です。
ここで対応を誤ると後手優勢になるため、慎重な応手が求められます。
上図以下、▲2一飛成(下図)
▲8六同銀 ではなく▲2一飛成 と飛車を成り込むのが正着です。
6一の金取りなので後手は忙しいですね。
上図以下、△7七銀成 ▲同桂 △3一金(下図)
ここは色々あるんですが、銀を取ってから△3一金 と受けるのがAIの推奨手でした。
上図以下、▲1一竜 △2二銀 ▲1五角(下図)
△3一金 ~ △2二銀 と節約して受けた場合、▲1五角 から手が続きます。
上図以下、△5二玉 ▲8五香 △8四歩 ▲4二銀(下図)
▲8五香 で飛車を止めてから▲4二銀 と絡めば対処が難しく先手勝勢です。
以下、△4二同金 は▲2二竜 と銀を取れば竜が生還するので・・・
後手は△1一銀 と竜を取り、先手は▲3一銀不成 と金を取るのが一例です。
これで次の▲4二角成 を見せながら▲7四桂 などを狙えば寄り筋だそうです。
定跡書などでは▲2五同飛(下図)の十字飛車が決まれば先手よしで打ち切られていますが・・・
いざ続きを指すと難しかったので一例だけ触れてみました。
一応、正確に指せば先手が勝ちやすいみたいなので、とりあえず「十字飛車」が決まれば先手が良くなるということだけ抑えてください。
この展開を避けるなら▲2五歩(下図)は取らず・・・
上図以下、△8六歩 ▲同歩 △同銀(下図)
このタイミングで△8六歩 から銀交換を狙うのが最善になります。
上図以下、▲8六同銀 △同飛 ▲8七歩(下図)
先手は素直に銀交換に応じ・・・
上図以下、△8二飛 ▲2四歩 △2二歩(下図)
▲2四歩 と詰めて△2二歩 と受けさせれば
「銀交換と引き換えに2筋を詰めた」
ので、お互いの主張が通ったまあまあな局面になります。
単に銀交換されるとつまらないため、「十字飛車」を含みにポイントを取りにいった感じですね。
こういった手順を反撃の一例として記憶しておくと役立つと思いますよ。
「矢倉」を崩す「十字飛車」

上図は、先手の「左美濃」に対し、後手が「△4四歩型の矢倉」に組んだ局面です。
ここから1つの狙い筋となる「十字飛車」を使った強烈な攻め筋を紹介します。
上図以下、▲4五歩 △同歩 ▲3五歩(下図)
4~3筋の歩を突くのが攻めの始まりです。
正確には上図の▲3五歩 は取らない方がいいんですが
「分かりやすく十字飛車が決まる一例」
として取った時の攻め筋を紹介します。
上図以下、△3五同歩 ▲4五桂 △4四銀(下図)
ここで「不安定な4四の銀」を狙った「十字飛車」があります。
上図以下、▲2四歩 △同歩 ▲同飛(下図)
▲2四歩 の突き捨てから▲同飛 と飛び出すのが後手の急所を直撃する「十字飛車」です。
次に▲2二飛成 △同金 ▲4四角 と攻める手や・・・
シンプルに▲4四飛 と銀を取る手など・・・
飛車の縦横の利きにある「2二の角」と「4四の銀」を狙った攻めが同時に受からず後手は困っています。
上図以下、△2三歩(下図)
どちらかと言えば▲2二飛成 の方が厳しいので△2三歩 と受けますが・・・
上図以下、▲4四飛 △同角 ▲同角(下図)
飛車切りから4四に角を出た上図は
・▲1一角成
・▲5三桂成
などの厳しい手がある上に、左美濃の堅陣を頼りに一方的な攻めを狙える先手が勝勢です。
成功例として極端な手順を紹介しましたが、歩の突き捨てから▲4五桂(下図)と跳ね・・・
逃げた銀を狙って▲2四歩 △同歩 ▲同飛(下図)の「十字飛車」にいくのは定番の攻め筋になります。
この辺の手順はAIで検討して2パターンくらい覚えておくと気持ちいい攻めが決められるようになりますよ。
「一間竜」とは・・・ 「玉」と1マス離れた位置に「竜」で迫る一手
「一間竜」というのは「玉」と1マス離れた位置に「竜」で迫る一手
のことです。(下図)
1マス離れた位置に迫ることで「竜」の利きが最大限に発揮され
「合駒されても、その上か下から王手できる駒を打てば、合駒を取りながら迫れる」(下図)
というメリットがあります。
・竜の利きが玉に直通してる
・合駒の上から王手した駒に竜の利きがある
ため、上図の▲5六金 は「玉」でも「金」でも取れず、逃げるしかないのが分かるでしょうか・・・
この辺の解説は第5回の「飛車を使った3手詰め」の下図や・・・
第15回の「金の手筋」の下図など・・・
で書いたので、詳しくはリンク先の記事を参照してください。
この記事では実戦で見かける「縦の一間竜」を1つ紹介します。
2枚の飛車で矢倉を詰ます「一間竜」

上図は、後手の「矢倉」の3二の金を剥がし、「8一の竜」と「2八の飛車」で玉を間接的に睨んでいる局面です。
ここで矢倉を詰ます定番の5手詰めがあります。
玉を下段に落とし「縦の一間竜」で仕留める手順が見えるでしょうか・・・
ここからの手順は上下から2枚の飛車で迫る形になった時のパターンとして覚えておくと役立ちますよ。
上図以下、▲2一竜(下図)
ズバッと竜を切るのが好手で詰みます。
△1三玉 と上へ逃げるのは▲2三竜 の詰みなので・・・
上図以下、△2一同玉 ▲2三飛成(下図)
素直に竜を取るしかありませんが、▲2三飛成 と迫れば「縦の一間竜」が決まって受けがありません。
以下、△3一玉 と逃げても▲3二金 で詰みですし・・・
△2二金 と合駒しても▲3二金(下図)と打てば金でも玉でも取れず詰みです。
この5手詰めが矢倉をスパッと詰ます定番の形なので、覚えておくと読みを省略して迫れますよ。
最後に
基本となる手筋「飛車」編として
・十字飛車
・一間竜
を紹介しました。
・両取りの「十字飛車」(下図)
・「十字飛車」を含みにした反撃(下図)
・一気に決める「十字飛車」(下図)
・矢倉を詰ます「一間竜」
などは実戦でもよく出てくる形なので、類似形になった時に浮かぶようになってください。
十字飛車を含みにした攻めの手順は難しいかもしれませんが、
「浮き駒」がある時は「両取り」の「十字飛車」を意識する
だけでも「盤面を広く見る力」が少しずつ身に付いて成長すると思います。
相手のスキを意識して盤面を見る
というのは初心者の頃にはできないことなので、無意識に「十字飛車」を探していたら5級には到達していますよ。
ここまで
「5級を越える将棋講座」
として20回に渡って
・簡単な詰みパターン
・駒別の基本手筋
を紹介してきましたが、今回で終了になります。
講座を読んでくださった読者の皆様、ありがとうございます。
そしてお疲れさまでした。
ここまでの講座を一通り読めば、初心者の頃には知らなかった
・基本の3手詰め
・ちょっと上手な駒の使い方
が知識として入り、何となく浮かぶようになってくると思います。
もし実戦の中で
「少しだけど将棋っぽい手が指せるようになった気がする」
という場合、脱・初心者は達成し、
5級を越えるキッカケ
は掴んでいると思いますよ。
あとは対局を重ね
・得意戦法の定跡を覚える
・詰みや手筋のパターンを増やす
・勝負所に気付き、的確な手筋を選択できる
など、将棋の基本を固めながら手の精度を上げていけば
3級 ~ 1級
の上級も視野に入ってくると思います。
そこまでくれば初段も夢じゃありません。
今日までの講座がその第一歩になれば嬉しいです。