今回は「きのあ将棋」の「郷谷さん(上級-)」に
石田流本組み
から仕掛けた所で生じた
ちょっとドキッとする一手
を紹介します。
正しく応じれば何でもないけれど、ちょっとウッカリすると形勢が傾く
そんな「手筋っぽい一手」をお楽しみください。
7筋を支える金がヤッカイ
先手が「私」、後手が「郷谷さん(上級-)」です。まずはポイントの局面までの流れを書いておきます。
上図は「早石田」からすんなり石田流に組ませてくれた将棋の序盤戦です。
後手の6~7筋が金と銀で支えられていてイマイチ攻め所が見えず困っていましたが
「とりあえず一歩持って様子見かなぁ・・・」
と思い・・・
上図以下、▲7四歩(下図)
定番の歩突きから動いてみました。
応手次第では▲6四角 が刺さって攻めが成立しそう・・・
上図以下、△6三金(下図)
でもそう進むわけもなく、ヘタに歩に触らず金を上がるのが無難な対応ですね。
上図以下、▲7三歩成 △同金(下図)
一歩は入手しても7筋を金の厚みでカバーされると続く手が見えませんでした。
こういう所でそれっぽい手が浮かばないセンスの無さが悲しい・・・
実戦は▲7四歩 △6三金(下図)と進め・・・
すぐさま攻めの形を作らなければいけなかったのに玉の囲いを優先してしまい・・・
△8四飛 ~ △7四金(下図)から7筋を制圧され・・・
あっという間に後手持ちの形勢に傾いてしまいました。
手の流れもおかしかったし仕方ありませんね・・・
対局後に棋譜を振り返り
「不用意に仕掛けたのが悪かったのかな?」
と一歩交換にいった▲7四歩 を悔やみましたが、AIで検討すると悪かったのはそこではなく、△7三同金(下図)以降の指し方が悪かったと示されました。
実は上図の局面で形勢を保つ一手があり、まだまだ難しい将棋だったようです。
前置きはこのくらいにして、1秒たりとも浮かばなかった手筋っぽい一手を紹介します。
ちょっとドキッとする一手
実戦は▲7四歩 と打ったこの局面・・・
AIは違う歩打ちを示していました。
上図以下、▲7二歩(下図)
この歩、打たれてみるとドキッとしません?
ヘタな対応をすると一気に形勢を損ねそうな怖さがあるような・・・
ここで
・△7二同飛
・△7二同金
・△7五歩
などの応手が考えられますが、無難に収まるのはどの手でしょうか・・・
「次の一手」として少し考えてみてください。
続きは数行下の見出しで書きます。
▲7二歩 に△同飛 の変化
△7二同飛(下図)と飛車で取った場合・・・絶好の一手があって先手ペースになります。
上図以下、▲8五桂(下図)
この桂跳ねが気持ちいい一手ですね。
次に▲7三桂成 と金を取られるわけにはいかないので抵抗しますが・・・
単に△7四金 と逃げると▲7三歩(下図)の叩きがキツイので・・・
少し工夫して△7五歩(下図)と飛車を叩く手が考えられます。
素直に▲7三桂成 △同飛 ▲8六飛 と対応しても指せますが、手筋っぽく対応する手が最善でした。
上図以下、▲7五同飛 △7四金 ▲7三歩(下図)
「大駒は近づけて受けよ」
の狙いに逆らわず歩を取り、飛車取りに当てる△7四金 のタイミングで▲7三歩 と叩けば完了です。
飛車の取り合いは歓迎なので色々とムチャが利きますね。
上図以下、△7五金 ▲7二歩成(下図)
変わる手もないので飛車を取り合うくらいですが、こうなれば「と金」の存在も大きく先手優勢です。
7筋で飛車が向かい合った時は▲7三歩 の叩きが急所になるので覚えておくと役立ちますよ。
▲7二歩 に△同金 の変化
△7二同金(下図)と取った場合は・・・上図以下、▲6四角(下図)
気持ちよく角を飛び出せば手になります。
以下、△9二飛 には▲9一角成 △同飛 ▲7二飛成 があり・・・
△8四飛 なら▲9一角成 や、▲7二飛成 △6四飛 ▲7五金 などで先手優勢です。
上図以下、△7三歩(下図)
シンプルに受けられると形勢は互角ですが、7筋の歩が交換できましたし、角も軽く使えそうな展開で悪くありません。
以下、すぐ▲7四歩 と攻めるのは△8三飛 と受けられると難しいので▲3六歩 と突き、角を7筋を睨んだ形に避難させてから攻めを狙うのがAI推奨の手順でした。
形勢は±50の互角なのでこれからの将棋ですね。
とりあえず、すぐに押さえ込まれる展開にはならなそうなので良い流れだと思います。
▲7二歩 に△7五歩 の変化
AI推奨の最善手は△7五歩(下図)と叩く手でした。この手には
・角で取れば飛車の利きが止まる
・飛車で取れば角の利きが止まる
・大駒の当たりが強くなって反撃しやすくなる
などの利点があり、駒の働きを悪くして先手に好き勝手させない形に持ち込むことができます。
「焦点の歩」は常に狙い筋ですね。
・▲7五同角
・▲7五同飛
についてそれぞれ解説します。
まずは▲7五同角(下図)から・・・
飛車の利きが止まったので・・・
上図以下、△7二飛(下図)
飛車で歩を取る手が成立します。
ここで▲8五桂 と跳ねるのは△6三金(下図)とかわされて動きが取れなくなり・・・
上図以下、▲7三歩 △8二飛(下図)
飛車をどうにかしようと▲7三歩 と叩いても、△8二飛 とかわされると次の△8四歩 の桂取りが受からず後手ペースになります。
なので、指すなら▲8五桂 ではなく▲6四角(下図)ですが・・・
上図以下、△7四歩(下図)
冷静に歩を打たれると手が難しいです。
以下、▲7三角成 と強引に攻めると△同飛 ▲8五桂 △8三飛 ▲8六歩 △8四飛(下図)と進むのが一例で・・・
強行が好みじゃないなら△7四歩 に▲9七角(下図)と引き・・・
上図以下、△6三金 ▲8五桂 △8二飛 ▲8六飛 △7五歩 ▲7三歩(下図)
と進めれば、どちらも互角の形勢になります。
色々と動く変化が好きならこの展開を選ぶのはアリかもしれません。
もうちょっと落ち着いた変化がいいなら△7五歩 は▲同飛(下図)と取る方が良さそうです。
以下、△8四金 には▲7六飛 と引いて▲7一歩成 を見せればいいですし・・・
△7二飛 には▲8五桂 △7四金 ▲7三歩 の叩きがあって先手ペースなので・・・
上図以下、△7二金(下図)
金で歩を取るのが形勢を保つ冷静な一手になります。
上図以下、▲7六飛 △7三金(下図)
こうなると先手も動くのが難しいので飛車を引くくらいですが・・・
そこで△7三金 と上がれば▲7二歩 を打つ前と同一の局面に戻るので・・・
先手が局面を良くする手が見えず、後手も動く気がないなら千日手になります。
有効な手筋っぽく見えた▲7二歩 は決め手にならず、後手が冷静に対応すればループするだけの一手でした。
最初に
ちょっとドキッとする一手
と表現したのはそういうことです。
実戦的に見れば
・後手がミスればラッキー
・正しく応じても時間を消費させられる
というメリットがあるので1回は試す価値があるかもしれません。
もし対応に悩んでかなりの時間を消費してくれたなら3回目の△7五歩 を▲同角 と取り、ゴチャっとした変化に持ち込めば勝機がありますから。
今回の局面はあまり見かけませんが、もし定番の定跡形で
変化はあるけど最終的にループする手順
が見つかれば一発勝負の武器になるかもしれませんね。
最後に
▲7二歩(下図)の垂らしは振り飛車を指すなら覚えておきたい手筋です。今回は成立しませんでしたが、形が少し違えば有効な一手になったりするので狙い筋として知っておく価値があります。
もしループして千日手になるような場合でも、ミスれば勝ちに繋がるなら1回は試してみて
ちょっとドキッとさせる揺さぶり
に使うのは有効です。
この手の手筋への正着を見つけるのは難しく、実戦的にはかなり神経を使いますから・・・
対人間への勝負術としてこういう手順を1つ持ってると面白くなりそうですね。
正しく指せれば千日手
の変化を何個か研究するといつか使える日がくるかもしれませんよ。