上図は「きのあ将棋」の「郷谷さん(上級-)」に「先手番ノーマル三間飛車」で挑んだ一局の中盤戦です。
▲7四歩 と飛車先の歩を交換しようとしたら△6三金 と受けてきました。
実戦は▲7三歩成 △同金 ▲7四歩 と進めてチャンスを逃しましたが、AIで検討したら
凝り固まった大駒をさばく見事な一手
を示してくれたので、その感動を「次の一手」として出題しながら共有したいと思います。
「7一にいる馬」を逆用する見事な手順を考えてみて下さい。
答えは数行下の見出しで書きます。
次の一手の答え
では答えです。
上図以下、▲6四歩(下図)
この「焦点の歩」が凝り固まった「飛」「角」「銀」を一気に働かせる好手でした。
・△6四同銀
・△6四同金
・△7四金
といった応手が考えられるのでそれぞれ解説します。
△6四同銀 と取った場合
まずは△6四同銀(下図)と取った場合から。パッと見は上部への厚みが増して捌きにくくなりそうな感じがしましたが・・・
上図以下、▲7五銀(下図)
ガツンと銀をぶつけるのがAIの狙いでした。
この一手で角筋が後手陣に通り、いつでも▲2二角成 △同玉 ▲7九飛 と馬を取る手を狙えるのがポイントです。
上図以下、△7五同銀 ▲同飛 △8九馬(下図)
後手は銀交換をしてから△8九馬 と素抜かれる手を避けるくらいですが・・・
上図以下、▲8五飛(下図)
シンプルに▲8五飛 と飛車成りを見せれば先手優勢です。
上図以下、△8二歩 ▲6四歩(下図)
飛車成りを受ける△8二歩 には再度▲6四歩 と叩くのが好手で・・・
以下、△5三金 なら▲9五角 で薄くなった7筋を狙えばいいですし・・・
△6四同金 なら▲5三銀 の両取りで飛車を取りにいけばOKです。
上図以下、△7四金 ▲6三歩成(下図)
残された手は△7四金 と飛車取りに出る手ですが、軽く▲6三歩成 と成り捨てれば先手優勢です。
以下、△6三同飛 なら▲8二飛成 が厳しいですし・・・
△8五金 なら▲6二と と飛車を取り合えば玉の固さが大差で先手優勢になります。
粘るなら△4二飛(下図)のように逃げるくらいですが・・・
以下、冷静に▲8六飛 と引いてから▲5三銀 や▲5二銀 を狙えば先手勝勢です。
▲7五銀 のぶつけや▲6三歩成 の軽い成り捨てが見事な手順でしたね。
△6四同金 と取った場合
次は▲6四歩 を△同金(下図)と取った場合です。この手にはシンプルに・・・
上図以下、▲7三歩成(下図)
薄くなった7筋に歩を成れば先手優勢です。
以下、△7三同桂 なら▲同飛成 △6三金 ▲7一竜(下図)と馬の素抜きを含みに慌てず迫ります。
上図以下、△8九馬 ▲6五銀(下図)
後手は△8九馬 とかわすくらいですが、▲6五銀 と出て▲2二角成 △同玉 ▲4一竜 を見せれば後手は受けが難しいです。
以下、△6一歩 には▲7五桂 と金を狙う手が厳しいですし・・・
△4二飛 と飛車を受けに使う手には▲4六桂(下図)と嫌な位置に桂を置いておけば後手は動きにくいです。
以下、△6四歩 ▲5六銀 とジックリ指し、ゆっくり迫れば先手優勢です。
▲7三歩成 を素直に取る手はダメなので△7五歩(下図)と反発する手も考えられますが・・・
上図以下、▲7五同銀(下図)
これは素直に取っておけば▲2二角成 から馬を素抜ける形になって先手ペースになります。
以下、△7五同金 ▲2二角成 △同玉 ▲7九飛 △6五飛(下図)と進むのが一例で・・・
上図以下、▲6三と △4二銀 ▲6六歩(下図)
さりげなく「と金」を活用してから▲6六歩 と焦点に打てば応手が難しく先手優勢が確定します。
▲7三歩成 に「強気の対応をしてもダメなら・・・」と△6一飛(下図)と逃げる手もありますが・・・
上図以下、▲6五歩(下図)
この手には▲6五歩 と金に働きかければ先手ペースになります。
以下、△6五同金 なら▲同銀 と取り、馬の素抜きを避ける△8九馬 に▲6三金(下図)とガッチリ押さえ込めばいいですし・・・
この展開を嫌って▲6五歩 を△5五金(下図)とかわしたら・・・
上図以下、▲5五同銀 △同歩 ▲6二金(下図)
金を取り、すかさず▲6二金 と厳しく打ち込めばペースを握れます。
上図以下、△6二同銀 ▲同と △同飛 ▲9五角(下図)
清算後に▲9五角 と出れば、飛車と馬の両取りが決まって先手優勢です。
△7四金 と逃げた場合
▲6四歩 を取る手がダメとなれば△7四金(下図)とかわす手が考えられます。これなら先手の思い通りにいかなそうと思いきや・・・
上図以下、▲7五銀(下図)
シンプルに銀をぶつけて先手ペースです。
この形では常に角筋を通すのが急所になります。
△8九馬 なら▲7四銀 △同歩 ▲6三金 があるので・・・
上図以下、△7五同金 ▲同飛 △8九馬 ▲8五飛(下図)
後手は銀を取るくらいですが、素直に対応して▲8五飛 と回れば▲8一飛成 と▲6三金 が受からず先手優勢です。
補足:いきなりの▲9五角 は「後手持ちの互角」になる疑問手
問題図を見て、すぐに▲9五角(下図)と馬取りにしながら7三を狙う手が見えた人もいると思います。
パッと見は良い手っぽく見えますが、正しく応じられると難しいようです。
上図以下、△8九馬 ▲7三歩成(下図)
ここで△7三同桂 なら▲7四歩 で先手有利(+400)ですが・・・
上図以下、△7三同金(下図)
金で取るのが正着で・・・
上図以下、▲7三同角成 △同桂(下図)
角切りで決まったように見えて一筋縄ではいきません。
以下、▲7三同飛成 には△6六飛(下図)と銀を取りながら飛車をさばかれ・・・
上図以下、▲5三竜 △4二銀 ▲5四竜 △5一歩(下図)
こちらも銀を取り返せますが、△4二銀 ~ △5一歩 とガッチリ受けられると次の手が難しくやや後手持ちの互角(-120)を示しています。
△7三同金 に角切りが成立しないなら▲7四歩(下図)と打つ手が考えられますが・・・
上図以下、△7二金(下図)
冷静に金を引かれると次の手が難しいです。
▲6二角成 には△同銀(下図)と応じた手がけっこうしっかりしてますし・・・
かといって他の手となるとコレといった手がありません。
形勢も後手寄りの互角(-270)を示しており、勢いよく見えた▲9五角 は成立しないようです。
7三に殺到して竜を作れば勝ち
みたいな大雑把な読みでは落とし穴に落ちてしまうみたいですね。
最後に
実戦では1秒たりとも浮かばなかった一手から見事に捌いたAIの一手を紹介してみました。上図を見てパッと▲6四歩 の叩きが浮かぶようになれば三間飛車を指すのが楽しくなりそうですね。
もし今回の問題を解いて、もう少し玄人向けの「さばき」を学びたくなったら
「久保利明 さばきの一手」
はオススメです。
振り飛車を指すなら外せない一冊なので、興味が湧いたら読んでみて下さい。