今回は、角換わりの強烈な攻め筋を学べる本
「神速!角換わり▲2五歩型」
のレビューをしたいと思います。
この本は、ここ数年で現れた驚異的な速さで攻める戦法
「角換わり▲4五桂急戦」
を中心に攻撃的な角換わりの指し方を解説しています。
1手のミスが命取りになる急戦ということもあり、後手の指し方を制限することができるので
「狭く深く1つの形を掘り下げて学びたい」
という方にオススメな一冊ですね。
この記事では「大まかな概要」と「感想」を書いていくので、購入を迷っている方の参考になれば嬉しいです。
後手の形を絞る▲7八銀
序盤早々▲7八銀(下図)というめずらしい一手から始まります。ここで後手から△7七角成 としてくれば普通の角換わりに合流しますが、もし角交換をしなかった場合にこの一手の価値が現れます。
▲7八銀 の形は意外としっかりしてスキが少ないので、後手がヘタな対応をするといきなり油断ならない仕掛けがあり、ウッカリするとそのまま先手が勝ってしまう
「わからん殺し」
風な攻め筋があります。
これは知っておく価値がある手順ですね。
詳しくは本書を見てもらうとして、大雑把に説明すると▲7八銀には
・△4四歩 から雁木を目指す
・△6二銀 から相居飛車を目指す
といった手があまり得策でなく、後手の駒組みの自由を制限している意味があります。
これによって紛れがなくメインの「▲4五桂急戦」までスムーズにいけるので分かりやすい序盤になっています。
「角交換してこなければちょっとチャンスかも・・・」
という序盤早々の駆け引きもあって面白い一手だと思います。
恐ろしい攻め筋の「▲4五桂急戦」が詳しく解説されている
序盤の▲7八銀 を乗り越えたら次の恐ろしい攻め筋である「▲4五桂急戦」
が待っています。
上図は先ほどの▲7八銀 に対し、△7七角成 の角交換をして少し駒組みが進んだ所です。
何気ない序盤に見えますが、相手の応手次第では次に
▲3五歩 △同歩 ▲4五桂(下図)
と、いきなり仕掛ける準備が整っている油断ならない局面になっています。
ヘタな一手を指せば▲4五桂 から攻め潰されるので、後手は正しい対応を知らなければけっこう危ないですね。
本書ではかなり詳しく▲4五桂急戦について解説してあり、応手を知らない相手にはこのまま攻め潰して圧勝できたりします。
「こんな手、思いつかないよ・・・」
「こんなムチャに見える手が成立するなんて・・・」
「仮に1手目が浮かんでも、そこから攻め切るまでの手は見えない・・・」
といった細い攻めを繋げる見事な一手が目白押しなので、これらの手順を知れるだけでこの本を買う価値があります。
攻める側として覚えるのはもちろんですが
「▲4五桂急戦をやられて困ってる・・・」
「イマイチ受け方が分からない・・・」
といった受ける側の人の方が役立つ情報かもしれません。
ここ数年で最も食らいがちな
「分からん殺し」
だと思うので、この本でその不安を解消しておくのはアリですね。
1つの形への誘導
・序盤早々の▲7八銀・▲4五桂急戦
といった一手のミスが命取りになる戦法のおかげで後手には大きな変化の余地がなく、腰掛け銀模様になったとしても後手をほぼ同じ形に誘導できます。
ここまでの怖い急戦を乗り越えても
「実はまだ先手の研究範囲に入っている」
というのがこの本の恐ろしい所であり売りでもあります。
最初の書き出しで
「狭く深く1つの形を掘り下げて学びたいという方にオススメな一冊」
と書いたのは、ここまでの流れによって成立しているからこそ書けた言葉です。
・急戦の対応を知らなければそのまま攻め潰す
・仮に対応できても絞った研究範囲の中で思惑通り
と、一通り読んで序盤からすべての流れが繋がっている見事さに感動しましたね。
腰掛け銀になってからの定番の攻め筋もしっかり解説してありますし、これ1冊でほぼ完結しているのが素晴らしかったです。
最後に
現代角換わりの課題でもある・▲4五桂急戦
・▲4八金 ▲2九飛型
をキレイな流れで学べる
「神速!角換わり▲2五歩型」
は本当に最高の一冊です。
これまでいくつか角換わりの本を読んできましたが、
「もし初段くらいの人に1冊だけ角換わりの本をオススメするならどれにする?」
と聞かれたら迷わずこの本を推しますね。
これ1冊で充分な攻め筋が学べますし、形を絞って覚えられる分かりやすさが実戦向きですから。
狭い範囲でAIと研究をすれば1つの勝ちパターンが見つけられるかもしれません。
あまり広く手を出す時間がなく
「最新の角換わりを何か1つに絞って有効な指し方を学びたい」
と思っている方には1冊で完結するこの本がオススメなので、候補に入れて検討してみてください。