今回は「筋違い角 戦法」を指す上で必須になる狙いや感覚を学べる本
「奇襲の王様 筋違い角のすべて」
のレビューをしたいと思います。
「筋違い角 戦法」というのは、初手から▲7六歩 △3四歩(下図)と角道を開けあった時・・・
上図以下、▲2二角成 △同銀 ▲4五角(下図)
いきなりの角交換からすかさず▲4五角と打ち、一歩得と独特な角使いによって相手を翻弄するマイナー戦法です。
▲4五角 を打った将棋は
・後手が飛車を振りにくい
・深く研究している人が少ない
・変則的な将棋になる
といった特徴があるため
・振り飛車党の得意形を外せる
・居飛車党相手でも自分だけ深く研究した形に持ち込める
・強い人でもミスをしやすい
などの実戦的なメリットがあったりします。
なので
「対 振り飛車が苦手・・・」
「最新の定跡についていけないからマイペースで指せる戦法を知りたい」
「格上の人に1回でいいから勝ちたい」
といった方は本書を読んで「筋違い角」を覚えれば悩みを解消できるかもしれませんよ。
この記事では
・大まかな内容
・収穫のあった部分
に触れながら感想を書いていくので、興味のある方は購入前の参考にしてみてください。
- 意地でも飛車を振る展開への対応策が学べる
- 「筋違い角」を活かした「振り飛車」の指し回しがカッコイイ
- 「筋違い角」+「居飛車」の指し方も学べる
- 「筋違い角」側にとって気になる変化も解説されている
- 実戦編が参考になる
- 「筋違い角」対策についての答えにクスっとした
- 最後に
意地でも飛車を振る展開への対応策が学べる
最初に書いた通り「筋違い角」はいきなりの▲2二角成(下図)からスタートしますが・・・ここで銀ではなく△2二同飛(下図)と飛車で取る手が気になった人もいませんか?
振り飛車党なら
「角を取りながら飛車を振れば手得できる」
と飛車で取る手から考えますよね。
これが成立すると
「簡単に飛車を振らせない」
という「筋違い角」側の狙いが看破されて終わりになる所、まずはこの手への対応手順から解説してくれています。
そしてもう1つ、▲4五角(下図)と打った局面で・・・
上図以下、△6二飛 ▲3四角 △4二飛(下図)
といった感じの「ムリヤリ四間飛車」という指し方もあるんですが・・・
この手順に対しても初見なら引っ掛かるであろう「筋違い角」ならではの手順を解説しています。
「とりあえず飛車を振りたい」
という感じの浅い考えの人ならカモとして処理できるようになれますよ。
「筋違い角」を活かした「振り飛車」の指し回しがカッコイイ

上図の▲4五角 を打った後は
・△6二銀
・△5二金右
と受けるのが定番の流れになり、ここからの駒組みを考えると「四間飛車」と合わせる下図のような形が有力になるので・・・
まずは「筋違い角」+「振り飛車」の指し方から解説されています。
ここで学べる
・「筋違い角」の狙い
・駒組みの注意点
・理想形
を知れば筋のいい指し方が身に付いて楽しくなれそうです。
角を活かした「さばき」はこの戦法ならではの指し回しで
「パッと見では変な位置にいて使いずらそうな角がこんなに働くとは・・・」
ってメッチャ感動しましたね。
この辺の手順はぜひ読んでもらいたいです。
「筋違い角」+「居飛車」の指し方も学べる
「筋違い角」は基本的に振り飛車と合わせる方が有力ですが、居飛車と合わせる指し方もあります。ただ、居飛車が有効になるには
・相手の〇〇〇が〇いこと
・〇が〇〇に近いこと
といった条件があり、
といった考えだと上手くいかない感じのようです。
上記の居飛車が成立しやすい2条件を知れたことは大きな収穫になりました。
2筋を睨んだ角を活かして棒銀をやるのが好きでしたが、上手くいかない時は確かに2条件を満たしてなかった気がします。
相手の動きに合わせて的確に指す大切さを改めて見直すキッカケになりましたね。
「筋違い角」側にとって気になる変化も解説されている
買った時のお楽しみとして詳しくは伏せますが・相筋違い角
・飛車角交換型
・△2二飛転換型
といった
知らないと「筋違い角」側が困るかもしれない手順
についても解説されています。
指されてみると
「そんな手があったのか・・・」
という感じの意外な一手で、もしかすると「筋違い角」への狙い外しとして使えるかもしれません。
マイナー戦法にマイナーな指し手で対抗する
みたいな逆襲の対策として1つを深く研究するのはアリかもしれません。
実戦編が参考になる
解説の後は実戦譜から学べます。講座は「筋違い角」の狙いが分かる手順を1~2例サラッと解説した感じで少し物足りない気がしましたが、そこを実戦譜で補っている感じですね。
武市先生がプロ相手に指した10局を通して「筋違い角」の実戦的な指し回しを見ることができます。
要所になる局面を次の一手方式で出題し、
「局面をどう見てどう指すか」
というプロならではの感性を著者2人の対話形式で解説している貴重な内容でした。
アマとは違うプロの見方や考え方に触れられたのは大きかったですね。
一局を通した解説付きの棋譜も掲載されているので、コレを初手から並べれば感覚を掴めそうです。
実戦編が本当に為になったので、トッププロの感覚を解説した「戦いの絶対感覚」の特別編として・・・
「戦いの絶対感覚」(筋違い角 編)
みたいなものを出してほしいと思ってしまいましたよ。
「筋違い角」対策についての答えにクスっとした
実は、私がこの本を買ったのは「筋違い角」を指すためではなく「筋違い角をやられた時の対策を知りたかったから」
でした。
定跡書だと最終的には形勢不明で終わることが多いので
「その形に持ち込む手順を知れれば何かヒントになるかも・・・」
みたいな期待を持っていたんですが・・・
本書では「筋違い角」の成功例がメインだったのでイマイチ対策を掴み切れずにいます。
でも、コラムの最後で1つ面白い答えが書いてありました。
「逆側の立場で筋違い角対策も伺っておきたいのですが」
という質問に対する武市先生の返しが
「そりゃ、〇〇を〇〇〇〇のが最善ですよ」
というシンプルなものでクスっとしちゃいましたね。
確かにこれ以上の対策はない
っていう答えでしたから。
この答えは買った時のお楽しみに伏せておきますが、
冗談のようで、ある意味コレが将棋の本質かもしれない
と思ってしまった答えは面白かったです。
最後に
「振り飛車党を倒す秘策が欲しい」「流行とか関係ない戦法を覚えたい」
「自分だけが深く研究した得意形に持ち込みたい」
といった独特な戦法を探しているなら
「奇襲の王様 筋違い角のすべて」
を通して「筋違い角 戦法」を覚えるのはアリだと思います。
いざやられると困る戦法トップ3には入ると思いますし、「筋違い角」をガッツリ研究して得意戦法にすれば
「角道を開けあった将棋なら格上にも勝てる秘策が1つ手に入る」
と言っても過言ではありません。
絞って研究するなら最高の題材だと思いますよ。
自力で考える新しい将棋に挑戦するのも楽しいので、そのキッカケを本書から掴んでみてはいかがでしょうか。