今朝、ちょっときのあ将棋の郷谷さんと対局したら圧倒的大差で勝ち切れたのでその一局を紹介します。
前に紹介した「三間飛車藤井システム」での攻略の途中で、郷谷さんがたまにするミスをとがめた一局なので、ちょっとした参考にもなると思います。
疑問の▲6八金寄
先手が「郷谷さん」、後手が「私」です。上図は、先手の郷谷さんの居飛車持久戦に対し、後手の私が三間飛車藤井システムの駒組みをしている所です。
ここまでは過去に紹介した記事と同じ手順ですね。
特に問題なく進むと先手がここから左美濃や穴熊に囲う将棋になるんですが、本局はここでちょっとした疑問手を指してきました。
上図以下、▲6八金寄(下図)
たまに指される金寄りです。
シンプルに固める手順なんだと思いますが、▲6八角 と引く変化がいったん消えるのでちょっとありがたい一手だったりします。
上図以下、△7三桂 ▲8六角 △6三銀(下図)
これもよくある展開です。
▲8六角 と6四の歩を狙い、それをシンプルに△6三銀 と受ける所まではけっこう経験がありますから。
この時、▲6八金寄 の一手がちょっと角の可動域を邪魔してる感じがしなくもないですね。
本局は郷谷さんの疑問手をキッカケにこの狭い角をいじめる展開になります。
疑問手をとがめる
上図以下、▲5七銀 △5二金左 ▲6六銀(下図)
銀を進出し、角との連携で7三の桂頭や6四の地点を狙ってきています。
このまま何もしないと後手が不利になりますが、これはちょっと疑問手なのでとがめにいきます。
上図以下、△4五歩(下図)
角筋を通して先手玉を睨むのが有効な一手です。
これで先手の銀は自由に動けなくなります。
上図以下、▲5五銀 △5四歩 ▲6六銀(下図)
強引に銀を進出しようとしましたが、それは玉の位置が悪く無理でした。
上図以下、△6五歩 ▲7七銀 △8四歩(下図)
銀を追い詰め、冷静に△8四歩 としたのが局後の検討でAperyも推奨していた好手でした。
この△8四歩 の代わりに△8五桂 と角筋を活かして銀を狙う手もありますが、冷静に先を読むとジワジワと狭い角を狙った方が得です。
ここからじっくりと優勢を築いていきます。
角を責めて優勢に
上図以下、▲2四歩 △同歩 ▲9六歩(下図)
先手は2筋を突き捨ててから角の退路を作ります。
ここから平凡に進めて後手有利です。
上図以下、△8五歩 ▲9七角 △9五歩 ▲7八玉 △9六歩 ▲8八角(下図)
端の位も制圧し、先手は窮屈で手がありません。
そして次の一手が大差の局面ならではの一手でした。
上図以下、△2二飛(下図)
先ほどの突き捨てを悪手にする一手です。
ジワジワと2筋からの逆襲を狙います。
大差になっているのでこういうゆっくりした攻めが間に合います。
Aperyも推奨していたので自分の感覚が間違ってなかったのが嬉しかったですね。
つい大差だからと油断して玉頭方面から一気に攻め潰そうとしがちですが、こういう時こそゆっくり攻めるのが勝ちに近づくコツになります。
方針は一貫した方がいい
上図以下、▲5八金寄 △2五歩 ▲6八銀引(下図)
序盤の▲6八金寄 を悪手と認める▲5八金寄・・・
そしてどうにか駒を捌こうと▲6八銀引 から角交換を狙ってきましたが、こちらの方針は「ゆっくり勝つ」なので徹底的に相手に何もさせない受け重視の手を貫きます。
上図以下、△4四銀(下図)
「角交換は絶対にしない」
「じっくりゆっくり抑え込んで勝つ」
という意思が強く出た一手です。
中途半端に「攻めか受けかハッキリしない曖昧な手」を指すのが逆転を許すミスになるので
攻めると決めたら徹底的に攻める
受けると決めたら徹底的に受ける
という方針の一貫性が大切になります。
今回は飛車先の歩さえ成れれば勝ちなので、慌てずに受けを重視して徹底的に守ります。
とにかく受ける
上図以下、▲4六歩 △同歩 ▲4八飛 △2六歩(下図)
角交換を拒否したおかげで先手から有効な手がなく飛車先の歩が間に合いそうです。
上図以下、▲4六飛 △4五歩 ▲4七飛 △2七歩成(下図)
「と金」ができて一安心ですね。
あとは無理をせずに飛車を成り込めばOKです。
上図以下、▲4四角 △同角 ▲7七銀 △3三桂(下図)
ちょっとドキッとする角切りでしたが、慌てずに受けに徹します。
飛車を使わせなければ優勢は変わりません。
上図以下、▲4六歩 △同歩 ▲同飛 △4五歩 ▲3六飛(下図)
ちょっと惑わす飛車寄り・・・
シンプルに△4三金 と受けると▲2三歩(下図)の叩きがちょっと嫌味なので冷静に受けの手を考えました。
取ると▲3二銀 で大事件なのでこの展開だけは避けないといけません。
▲3六飛 に対して私が指したのは徹底した受けを貫いた一手でした。
完全に受け切って勝利
角を手放してガッチリ受ける△4三角(下図)で受けの方針を守り、これで勝ちが近づきました。上図以下、▲3一銀 △2四飛 ▲5五歩 △同歩 ▲7五歩 △同歩 ▲9三歩(下図)
歩を突き捨てて動いてきますが、こちらはもう受けることしか考えていません。
上図以下、△9三同香 ▲9六香 △9五歩 ▲同香 △同香(下図)
▲9六香 にウッカリ△同香 とすると▲同飛 とされて飛車が働くので注意です。
ちょっとした歩の手筋を使って9五の地点で香車を取るのが飛車を無力化するコツですね。
上図以下、▲4六歩 △同歩 ▲同飛 △4五歩 ▲1六飛 △3八と(下図)
と金 が間に合い後手勝勢です。
上図以下、▲2六歩 △1四歩(下図)
ゆっくり勝つ方針なので、飛車成りを受けた▲2六歩 で狭くなった飛車を取りにいく△1四歩 という友達をなくす一手で勝ちにいきます。
上図以下、▲7四歩 △同銀 ▲5九金寄 △1五歩(下図)
先手もどうにかしようと色々しますがついに手が尽きました。
上図以下、▲2五歩 △同飛 ▲3六飛 △2九飛成(下図)
▲2五歩 から飛車を生還しますが、△2九飛成 と飛車を成り込んだ所で完全に手がなくなり郷谷さんの投了となりました。
疑問手をとがめて大差になった局面からの「徹底した受けの方針」が実を結んだ勝利でしたね。
最後に
郷谷さん相手に久しぶりの完勝譜だったので嬉しくて記事にしてしまいました。長年将棋をやっていて思いますが、やっぱり方針を徹底するっていうのが大事ですね。
中途半端に決めにいったり反撃を狙うっていうのが相手に付け込まれるスキを生みますから・・・
攻めるなら攻める
受けるなら受ける
と完全に決めて指す方が迷いがないので変な悪手を指しにくくなると思います。
よく逆転負けをしているという人は方針を徹底して指してみてください。
曖昧な手が減るちょっと良い感じの将棋になるかもしれませんよ。